CHANCE 2 (後編) =Turbulence=

 



…やっぱり空気だけを瞬間移動させる事が出来るみたいだ。


だけど、これっぽっちじゃダメだ!


俺は、飯を食うのも忘れてトレーニングを続け、最終的には空気だけを瞬間移動させて、厚さ3cmはある週間少年雑誌を貫通させるまでになっていた。


しかし、常にペットボトルを持ち歩く訳にはいかないので、秋葉原まで行って、特注で握りやすい筒状の金属ボトルを作って貰った。


これは、直径3cm・長さ8cm程の丈夫な金属の円柱で、中が空洞になっているものだ。


完全に密閉されているが、空気を瞬間移動させた後は、中が真空になるので、円柱の横に付いているボタンを押せば、中に空気が充填される様になっている。


何故わざわざこんなものを作ったかと言うと、別に何も持たないでも空気だけを瞬間移動させて、物を倒したりすることは可能なんだが、何も手に持たずに遣れば、能力の事がバレてしまう。


だから、いかにも武器を持っているようにみせる為に作ったのだ!


次に俺は、人間を動かせるのかを試してみることにした。


公園の横に止まっているタクシーがあったので、力を開放してからドライバーに


《ここは駐停車禁止区域だから、どっかに行け!》


と命じてみた。


10分ほど頑張ってみたが、全く移動しなかった。


今度は、やり方を変えてみた。


頭の中に俺の意識だけを移動させて、ドライバーの頭の中に直接命じてみた。


すると、直ぐにタクシーは走り去って行った。


この方法を使って、色んな人の頭の中に命じてトレーニングしてみることに。


まずは、タバコのポイ捨てをしたサラリーマンに《タバコは灰皿に捨てろ!》と命じてみたら、サラリーマンは先程捨てたタバコを拾い、携帯灰皿に吸い殻を入れていた。


また犬のフンを放置して行こうとしたおばさんには、《ちゃんとペットのフンはポケットに仕舞って持ち帰れ!》と命じたら、おばさんはいきなり素手でフンを拾いそのままポケットに仕舞っていた。


さすがにこれには慌てたけど、まぁ自業自得って事で!


この力はメチャ気に入った。


ビジョンと併用して使えば、かなり便利である。


XYZの活動がオフの日に、俺は関東神竜会の前に在る喫茶店に来ていた。


窓際に座り、事務所の入り口に目を向け、出入りする組員一人一人のビジョンを見ていた。