俺は今、かなり迷っていた。
調べれば調べる程、悪事の数々が明らかになっていったからだ。
バックに付いている関東神竜会には、200人以上の組員が居ることも分かった。
終戦間もない焼け野原の東京で、国を復興さす為に、土木建築に力を入れていた頃、人足貸しで儲けた初代組長が、自分の息子に組を譲り、歓楽街で用心棒や仲裁屋、風俗の経営で組を拡大させた。
跡目を、その当時組長の右腕だった男に譲り、その男は2代目の一人娘と結婚した。
今の4代目の組長は、その息子である。
若い頃から気性が荒く、ご法度の薬にも手を出して、その儲けでドンドン組を大きくしていった。
闇カジノを地下で開いたり、売春や地上げ、挙げ句の果てには政治家とのパイプラインまで出来上がっていた。
何処の傘下にも入っていなかったのだが、今では日本最大の組織《仙田組》の傘下に下り、仙田組の若頭の松嶋仁とは、五分の兄弟分の盃を交わしている。
非常に厄介な男、関東神竜会の組長
《松岡邦男》
この男とライジング・サンの日出社長が手を組んでいると、とんでもない事が起きるに違いない。
どうにかして、この二人の関係を悪化させて、手を切らす方法を考えなければ……。
組の扱っている薬を売り捌いている売人を利用してみるか!
でも、丸腰で接触するには危険だなぁ。
俺の力を利用して武器に成れば良いんだが……。
俺は、仕事がオフの日に部屋で一人考えていた。
人のビジョンが見えたり、物の記憶を見たりでは簡単に太刀打ち出来ないだろう。
使えるとしたら、物体の移動だよなぁ。
後は、物が動かせるなら人間だって動かせるのでは?と言う思いもわいてきた。
ふと目の前のテーブルに目をやると、ワインボトルのエアー抜きが出来る詮が目に留まった。
エアー!?
そう言えば、空気は瞬間移動させれないのだろうか!?
試してみることに…
空になった、500mlのペットボトルに詮をしてから手に持ち、力を開放する。
テーブルの上に週刊誌を立てらせて、手に持ったペットボトルの中の空気だけを瞬間移動させて週刊誌にぶち当たるイメージをしてみた。
その瞬間、ポコッって言う小さな音がして、ペットボトルが少しだけへこんだ。
すると、週刊誌が少しだけグラグラと揺れた。



