ハラボジニム(お祖父様)やアボニム(父上)の言うことが、最初は信じられなかった僕だが、いざこの力が自分の物になると、何か不思議な感じだ。
嬉しいと言う感情のほかに、怖いと思ってしまう自分も居た。
「アボニム(父上)、色んな事が出来ると仰いましたが、この力の使い方を間違えたら大変な事が起きちゃうんですよね。」
『おぉ、その通りだ!
人間の人生を左右したり、国を転覆させることですら赤子の手を捻るように出来ちゃうのがこの力だ。
どうだ?嬉しいか?』
「こんな力を手にする前までは、あんな力やこんな力が使えたら良いなぁ♪なんて思うことも、子供の頃には有りました。
でも、実際この力を持つと嬉しいと言うより怖いと思ってしまいます。」
『それで良いんだよ。
怖いと思う気持ちが有れば、バカな使い方をしないだろう。
常に自分を戒めながら、この力と向き合って生きていきなさい。
そして、本当に困った人を見付けたら正義の為に必要なだけの力をコントロールしながら使っていきなさい。
後、勝手に力が発動しないように、普段はこの指輪を右手の中指に入れておきなさい。
これは封印の指輪と言って、この不思議な力を無力にしてくれる指輪なんだ。
この指輪に嵌め込まれている石は、宇宙から降ってきた隕石らしいんだが、実際のところは何もわからない。
だが、分かるのは、この指輪を嵌めている間は、力を使えないと言うことだ。』
「アボニム(父上)達も嵌めているのですか?」
『勿論だとも。
ハラボジ(お祖父さん)も嵌めているよ。
この指輪は、亡くなった孝愃(ヒョソン)ひい祖父さんが嵌めていた物なんだよ。
無くさないようにな!』
「はい。
綺麗ですね。
落ち着いた輝きが有るし、今まで見たことの無い石です。
隕石ですかぁ……、と言うことは、私達の祖先は宇宙から来たのかも知れませんね!」
『宇宙からかぁ!
そうかもな!』
私は、交通事故で死にかけた時、助けてくれた守護霊の言った言葉を思い出していた。
<天の住人>
確かにそう言った。
天とは宇宙を指しているのだろうか!?
となると、我々の祖先は本当に違う惑星からこの地球に遣ってきたのだろうか!?
御先祖様達が書き残した記録の書は、加耶王国で天と交信して祭事を執り行っていたとも書かれてあったし……。
それ以前は、神女が異国の者と愛し合い産まれた子に不思議な力が宿ったとも書いてあった。
異国の者とは、宇宙からの訪問者とか!?
「アボニム(父上)、何をボォーっと考えているんですか?」
『いやいや、何でもないよ。
ところでハンス、お前にはどんな力が授かったのだ?』
「まだ過去と未来をみるビジョンの力だけしか分かりません。」
『そっかぁ~!
このサグァ(りんご)を空中に浮かしてみてごらん?
頭の中で、りんごが軽くなってスゥーって浮く感じをイメージしてみたら出来るかも。』
「分かりました。
遣ってみます。」
と言って、りんごに手をかざそうとした瞬間、突然目の前からりんごが消えて無くなってしまった。
『オイオイ、早速テレポートさせたぞ!
アボジ(親父)、私の息子はかなりの使い手かも知れませんよ。』
『チャンスや、それは良いが消えてしまったりんごは何処に行ったんだろうか?』
『そうですね、ハンスや、お前一体何を考えながら手をかざそうとしたんだい?』
「それが……、このりんごは酸っぱくて美味しくなさそうだなぁ~って思い、キムチん中に入れるためのりんごかなぁって思いました。」
それを聞いたアボニム(父上)は、キムチ専用の冷蔵庫の扉を開けて笑いだした。
『有ったぞりんご!
それも丸のまま形が変形することもなくだよハンス!』
と、随分と嬉しそうな顔でりんごを持ってくるアボニム(父上)、何がそんなに嬉しいのだろう……



