あまりジロジロ見るのもいやらしいので、ヘッドホーンをして再び目を閉じた。



ヘッドホーンからは、アボニム(父上)の曲が流れてきた。



去年、アボニム(父上)の友人水谷さんの娘さんの、結婚披露宴の時に演奏していた【 誓い -VOW- 】と言うタイトルの曲だ。



珍しくアコースティックギターで演奏していたのが印象的だったなぁ…



暫く聴いていたら、何となく視線を感じて左を見たら先程の女性がこっちを見ていた。



何か用事でも有るのかと思い僕は、



「どうかされましたか?」



と、聞いてみた。



すると、自信無さそうに



『あの~………

もしかして……高山君!?』



「確かに僕は高山ですが、何処かでお会いしたことが有りますか?

うちの父の会社の方ですか!?」



『やっぱり高山君だった!

面影があるなぁって思ったんだよねぇ♪

私よ。

覚えてないかしら?』



「……すみませんが、思い出せません。

何処かで見たことの有る顔だと言う感覚は有るんですが……、すみません。」



『忘れたの!?

あの日本橋のジュニアライズ・ミッションインターナショナルスクールで、4年から6年まで同じクラスだったのよ。』



「え~っと!

何かヒントでもくれませんか?」



『同じ年なんだから、敬語なんて使わないで!

ん……っと!

ヒントかぁ……そうだなぁ……、民団少年部かな!』



「民団少年部の同級生と言えば、熊川さんだけだから、な~んだぁ、熊川來美(くまかわ くるみ)さんって言うか、邵 來美(ソ・レミ)氏!

お久しぶり!

今は何をしているんですか?」



恒寿(ハンス)君、私の事を知らないんだ!



『私ね、今は音大に通ってて声楽を勉強してるんだ!』



「じゃあ、今はサボり!?

まだ夏休みになっていないでしょ!」



『バイト!?みたいなもんをやってるんだ。

これから仁川(インチョン)経由で帰るとこなんだ。』



「バイト!?

それもアメリカで!

熊川さん家って、うちのライバル会社の熊川企画だったよね!?

邵(ソ)会長の孫娘がバイトって!

嘘くさいけど、取り敢えずそういうことにしとく。

ところで、お兄さんとお姉さんはお元気ですか?」



『來斗(レド)兄さんは、アッパ(パパ)の会社の本部長してるよ。

來華(レファ)姉さんは、来月結婚するんだ!』



「來華(レファ)さんは、綺麗な方だったから、モテてたもんなぁ。

お相手は?」



『うちの会社の専務の息子なんだ!

姉さんが一目惚れしたんだよ。

猛アタックの末、漸く結婚まで漕ぎ着けたって感じ!

相手の男性は、姉さんが社長の娘って事に気後れして、なかなかどうして大変だったんだから!』



「そうなんだ。」



『ところで恒寿(ハンス)君は、今何してるの?』