久しぶりの白金台の実家には、妹の荷娜(ハヌル)の婚約者で歌手のKYU(朴 需パク・ユ)も来ていた。
俺と妻の善雅(ソナ)は、俺の両親が待っている両親の部屋に入っていった。
両親は、壁際に背を向けて二人ならんでこちらを見ている。
俺と善雅(ソナ)は、三拝三礼をしてから安全に帰ってきたことを報告して、妻はこれから高家(コガ)の家風を学び、夫の両親を我が両親と思い敬い、長男の嫁として精進していく事を誓って、漸く両親の顔にも笑顔が零れ、妻のソナも俺の方を見てはにかんでいた。
ソナは、そのあとオムニ(お袋)と一緒に台所へと行って、夕飯の準備を始めた。
俺は、アボジ(親父)と連れ立ってアボジ(親父)の書斎へと入っていった。
『で?
何か話が有るんだろ!?』
「はい。
実は、済州(チェジュ)のゴルフ場でクラブを盗まれたのは電話で話したでしょ!」
『あぁ!
港で犯人を捕まえたんだろう。』
「そうなんですが、力を使って自白させて、車の中にキャディーバッグを積んでいると言うので、相手の頭の中に【そのキャディーバッグをこっちの車に積み替えなさい!】って指示をだしたら、素直にキャディーバッグを取りに車に戻ったと思ったんですが、急に車に乗り込んで逃走しようとしたんです。
これって、俺の力が弱ったんだと思ったんですが、逃げようとした車を一気に止める力が有ったから、力が弱ったわけじゃなさそうだし、一体どうしたんでしょうか?」
『俺も経験あるよ。
思った以上に相手が素直にこちらの思い通りに動くから、だんだんと指示の出し方がソフトになってしまってるんだよ。
こちらの命令や拘束、指示の出し方が弱い場合、切羽詰まっている相手に対して有効な力が発揮できないんだよ。
要するに常に、力を使うときは、使う相手に対して全力で臨まなければいけないんだよ。
中途半端な力の行使は、失敗したり、時には大きな事故に繋がりかねないものだ。
今までは、チャンスもギリギリの切羽詰まっている状態で力を使って来たと思うんだが、今回みたいに、ほぼ犯人も分かってキャディーバッグが目の前にあり、積み替えさえすればそれでいっか!みたいに思っていたんじゃないかい?』
「はい。
確かにその通りです。
思った以上に相手が素直に行動するのが油断に繋がってしまいました。
こちらへ移せ!じゃなくて、こっちの車に積み替えて下さいね。って軽い気持ちで指示してました。」
『そうだろう。
ついつい気が緩んでしまいがちなんだよなぁ。
とくにチャンスの様に凄く強い力を持つ者は、自分の力に過信してしまったり、油断してしまいがちだから、今後は気を付けるようにな!』
「はい。
胆に命じときます!」
と、その時
コンコンコン!
『アボニム(お義父様)、チャンスオッパ、失礼します。』
と言って、ソナが入ってきた。
「どうしたんだい!?」
『シオムニ(義母様)が、夕飯の準備が出来たからリビングにと仰っております。』
「ソナ、何か言葉使いが硬いなぁ!
いつも通りで良いよ。
ねぇアボジ(親父)!?
さぁて、リビングに行きましょう。」
と言って、3人でリビングに向かった。
そこには、韓国家庭料理がズラズラッと用意されてあった。
……オムニ(お袋)、今日の晩御飯は気合い入ってるなぁ……
嫁に見せ付けてるのか?
それはないな。
オムニ(お袋)のビジョンを覗いてみるか!?
やっぱ止めとこ!
さて、KYUも 荷娜(ハヌル)と一緒に2階から降りてきたし、飯にすっか!