『そうなんだ!

何かカッコイイわね!』



「だろう!

俺がマンスオジサンの真似しても、ヤッパ全然似合わないんだろうなぁ。」



『それはそれで見てみたい気がするわ。』



「それじゃあソナはメイド服着て、お帰りなさいませご主人様!なんて遣ってくれたらやってあげるよ。」



『な、何を言ってるのよ!

そんな恥ずかしい事出来ないわよ。』



「それに似合わないだろうな!

もっと背が低くて可愛い娘ちゃんタイプの女の子なら似合うんだろうけどね!

ソナは、身長なんぼあんの?」



『え~っと、たしか今年の3月の誕生日に計った時は、168cm有ったよ。

えへっ、また大きく成っちゃったね。』



「だよなぁ!

うちの所属しているモデルで一番背が高いのが、広乃 李沙(ひろの りさ)だろ!

彼女が身長172cm有るんだが、その次に背が高いのが、ソナだからな。

さぁて、コーヒーも飲んだし、そろそろシャワー浴びて寝るとするか!

ソナ、先にシャワー浴びておいで。

俺は、荷物を片付けておくから。」



『は~いオッパ。

それじゃあお先です。』



と言って、寝室の奥の扉を開けてバスルームに消えていった。



俺は、荷物を片付けながら、さっき迎えに来ていた海珠(ヘジュ)の事を考えていた。




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ヘジュちゃんの本当のご両親は、この済州島で漁師をしていたのだ。



気候の良い時は、父親が船を操作して、母親が海女として海に潜って漁をしながら、定置網漁もするのだが、特に寒くなると定置網漁だけをすると言う両方で漁をして生計を立てていたのだ。



丁度寒い2月に海珠(ヘジュ)が産まれ、両親は娘に海の珠(真珠とか宝物の意)だと喜び、海珠(ヘジュ)と名付けた。



それから3ヶ月後、5月のある日、いつものように娘を弟夫婦に面倒見てもらい、漁に出た。



今日は、午後から天気が崩れるから早めに切り上げなければいけない。



だから、いつもより早い夜明け前から出港して、定置網を仕掛けてから浅い島の西側へと周り、命綱を着けた母親は、一気に13m程潜り、アワビやサザエをどんどん採っては網に入れていく。



明日は漁に出ないので、今日は2日分の漁をしようと頑張っている内に波が高くなってきた。



海面に現れた妻に、



「海明(ヘミョン)、そろそろあがろうや。」



『ヨボ(あなた)後1回!

大きなアワビが3つあったけん。

これが最後な!』



「あいよ!

じゃあ、アワビ捕ったら綱引けや!

俺が手繰り寄せるからの!」



『任したよアンタ!』



妻の海明(ヘミョン)が海に潜って1分程経過した。



手にしている命綱に、ズンズン!と反応が有った。



一気に妻を引き揚げてから、網の付いた浮き輪も引き揚げて驚いた。



大人の手のひら程の大きなアワビが幾つも幾つも入っている。



サザエも、20ヶ程有った。



「さぁ、定置網を回収してとっとと家帰るよ。」



『ハイよ♪』



久しぶりの大漁に機嫌の良い妻は、船内で冷えた体を暖めながら、着替えを済ます。



船を操作して、定置網を仕掛けているポイント迄来ると、先程より一層波が高くなっている。



「ヘミョン、ちょっと波が高いからよ、あぶねえからどっか掴まっとけよ!」



『ハイよ!』



馴れたもので、着替えを済ませたら、船内の暖房を消して、ドアの横に有る手すりに掴まり、備え付けのベンチに座った。



「こりゃヤバそうだよ。

定置網は明日にすんよ!


さっさと港にもどるからよ。」



『あんた、何を言ってんの!

網は目の前なんだから、引き揚げて帰ろうよ。

そろそろ海珠(ヘジュ)にも春用の服も買ってあげたいのよ。』



「分かった分かった!

じゃあ、引き揚げんど!

こっちきて手伝ってくれよ。

そのフックでブイを引っ掻けてくれたら、俺に渡してくれ。」



『分かったよアンタ。』



と言って、長い棒の先に付いているフックで、海面に浮かんでいる定置網を仕掛けた目印のブイをグッと引っ掻けた。



その時、タイミング悪く横からの三角波が船を襲い、グラッと船体が傾いた。



海明(ヘミョン)は、眼下に揺れる海面が一気に目の前まで近づいて来たかと思ったら、そのまま海に放り出されてしまった。



「おーい、ヘミョン!

どこだ~!

ヘミョン!」



『ヨボ!(アンタ!)

ここだよ~!』



「この浮き輪に捕まれ!」



と言いながら、船に備え付けらるている救命用のロープが付いた浮き輪を妻に向けてなげた。



が、波が高く巧く捕まえられない。



そこで、ロープの端を船に縛り付け、浮き輪を抱えて海に飛び込んだ。



そして、必死に泳ぎ妻の元へ向かうが、やはり波が邪魔をして上手く近づけない。