新星MUSIC本社別館から、本館へと戻ってきた俺達は、すぐに従兄弟の智盛ヒョン(ジソン従兄さん)から贈られたペアのTシャツとズボンに着替え、ロビーを抜けて表に拡がる広い駐車場に出た。
そこには、先程まで披露宴会場に居た皆が並んで出迎えてくれた。
その間を通った先には、ド派手なデコレーションをされた車が!
それに乗り込むと、運転席にはテギルがいた。
『チャンス、ソナちゃん、おめでとう!
これから俺が仁川(インチョン)国際空港迄運転するからな!』
「テギル、有り難う!
それから、宮廷料理の再現コース、マジで美味しかったよ。
特に、メインのタッカンマリは最高だったよ。
なんて言うか、とってもこくの有る甘辛さなんだよなぁ。
それに独特な鳥の臭みも無いし、無いどころかとても芳醇な味わいだったよ。
テギル、あれって何か特別な物でも入っているの?」
『さすがチャンス!
分かってくれてるねぇ~♪
実はさぁ、2年前に台風で智盛(ジソン)さんのお父さんの実家の梨農園が被害に遭ったって言うの覚えてるかい?』
「覚えてるさ!
何でも、8割がた収穫は終わってはいたけど、それでもかなりの数の梨が収穫直前で落下して傷物になってしまったから売り物にならないって嘆いていたけど、それとどういう関係が有るの?」
『あの時、「半値以下でも良いから!」って言うから、俺が全部買い取ったんだ。
そして、傷で痛んだ所を切り落として、一口大に切って大量の氷砂糖と大量のソジュ(焼酎)で漬け込んだんだ。』
「梨の果実酒かぁ!」
『そう!
その、甘ったるい果実酒を料理に使っているのさ!』
「さすがテギルさんですね!
私も、あのタッカンマリを食べたときは、あまりの美味しさに自分の披露宴と言うのも忘れて食べてたんだから。」
『有り難うソナちゃん。
今度作り方を簡単に教えてあげるからね!
うちの雪美(ソルミ)も料理が苦手だから、彼女と一緒にな!』
「ありがとうテギルさん。」
『ところでチャンス、二人で新婚旅行に済州島って!
お前達のハネムーンって、ヨーロッパ一周とか、ハワイとかに行くのかと思っていたのに!』
「ソナがさぁ、済州島に行ったことが無いって言うからさ。
俺だって本当はヨーロッパ一周とか考えてたんだぜ!
そしたらソナが済州(チェジュ)でポッサム(煮豚)やチョッバル(豚足)が食べたい!なんて言うからさ。
で、じゃあ新婚旅行で済州にってなったんだ。」
『ポッサムやチョッバルなら、うちの店のメニューにも有るよ。
わざわざ済州まで行かなくても、うちの店の方が旨いぜ!』
「今回は、食べるのもそうだけど、オッパと済州のゴルフ場で海コースのラウンドもしたいし、新星グループのプライベートビーチが在るってオッパの御義父様が教えてくれたから。
ちょうど今頃から海開きになっているんだって。
そこのビーチは、一般客は入ってこれなくなっているから安心だしね。
ちょうど明日は優珍オンニ(ユジンお姉さん)も、早目の夏休みだって言って旦那様の友植(ウシク)オッパと一緒に済州に来るって!
向こうで合流して、一緒に遊ぶんですよ。」
『ちょっと待ってくれソナちゃん!
その、ユジンお姉さんと旦那様のウシクお兄さんって、この間電撃結婚したアイドル歌手のU-JINと、役者の高 友植(コ・ウシク)の事かい?』
「そうですよテギルさん。」
『凄いビッグカップルじゃん!
仲良いのかチャンス!?』
「仲良いって言うか、言って無かったけど、あの役者の高 友植(コ・ウシク)って新星MUSICの副社長の息子だよ。
だから、俺とウシク兄さんはハトコ同士なんだよ。
俺は、小さい頃から智盛(ジソン)兄貴と、友植(ウシク)兄さんといつも一緒に遊んでいたんだ。
ボルテスⅤゴッコとか、三韓統一ゲームってボードゲームなんか、一日中遊んでいたよ。」
『そ、そうなんだ‥!
それが今じゃ、次期社長と次期副社長、それに未来の銀幕スターが従兄やハトコとはねぇ!
一族でガッチリって感じだな!』
「そうでも無いんだぜ!
ガッチリ一枚岩で、同じ思いで働いてくれてたら良いけど、実際は会社が大きく成りすぎたから、利権や相続や後継やでドロドロしてるところもあるし、今は俺のアボジ(親父)が健在だけど、俺が跡を継いだ時には何が起こるか、考えると正直怖いんだ!」



