江南(カンナム)に住む父方の祖父、孝愃(ヒョソン)ハラボジ(御祖父さん)。
そのハラボジ(御祖父さん)の弟の孝男(ヒョナム)大伯父の息子が、賢哲(ヒョンチョル)叔父さんで、その叔父さんが新星MUSIC本社の副社長をしている。
小さい時から、従兄弟同士である俺のアボジ(親父)とは兄弟の様にそだったそうだ。
その叔父さんが、今回主礼(ジュレ=媒酌人)をしてくれる事となった。
新星MUSIC本社近くにある承恩寺で、今から俺と善雅(ソナ)の婚礼式が執り行われる。
参列者は身内のみで、友人知人等は披露宴会場である新星MUSIC本社別館の大広間に正午までに来場して貰う段取りと成っている。
新郎の俺は、紗帽冠帯(サモクァンデ)と呼ばれる伝統的な礼装、新婦のソナは韓服の上に袖を大きく仕立てた円衫(ウォンサム)という衣装を着て、頭にチョクドリ(冠)を乗せている。
独特な身なりで違和感が有りまくりだ。
特に凄いのが、ソナの両ほおにつけられた赤い印【ヨンジコンジ】
伝統婚礼では定番の化粧で、雑鬼が嫌う赤色で邪気を払うという意味があるそうだ。
厳かの内に伝統的な婚礼式が終わり、披露宴会場へと向かった。
そこで、用意されていた屏風の前で写真撮影だ。
すぐさまソナはウェディングドレスに、俺はタキシードに着替え、もう一度写真撮影をしてから、披露宴会場入り口前に二人並んでスタンバイ!
スタッフの合図で扉が開けば、場内からウェディングマーチが流れてきた。
ドライアイスのスモークと共に、二人手をとり会場内へと足を進めていった。
主礼(ジュレ)である、賢哲(ヒョンチョル)叔父さんの挨拶や、俺達のスライドショーを観ながらの馴れ初め話、友人代表の挨拶や、ハラボジ(御祖父さん)のありがたいお話の後、ウェディングケーキに入刀、その後でお色直しである。
俺は白のタキシードから黒のタキシードへ!
ソナは、ウェディングドレスからショッキングピンクのカクテルドレスへ!
再登場する前に、やはり写真撮影だ。
撮影終了後、場内へ入ると、またもや携帯やデジカメでパシャパシャと撮られまくった。
お互いの両親へ感謝の言葉と花束を送り、余興の時間へ!
1番(トップ)バッターは、韓国の若手2世タレントなんだが、かなりの実力派歌手で、その上俺の小さいときからの友達の李 勲秀(イ・フンス)による、彼の持ち歌【ハッピーウェディング】を熱唱してくれた。
次に、新星MUSIC本社タレント達のお祝いソング3連発の後、元XYZのメンバーが特設ステージに集まりだした。
KYUがマイクを握りおもむろに、
『チャンス ヒョン、キョロン チュカハムニダ!(チャンス兄貴、ご結婚おめでとうございます。)
お祝いの歌を作ったので聴いてください。
タイトルは
【ヨウォニ カチ(いつまでも 一緒に)】
です。』
ジョージのキーボードが主旋律を奏で、テジュンのベースが副旋律を!
そして、フランス帰りのケントが、久々に俺達の前でドラムスティックを握り、リズムを刻んでいく。
デビューして7年!
24才のKYUは、初めて日本に遣ってきた当時の弱気な性格を克服して、今じゃバラエティー番組に出ても、堂々と自分の意見が言える逞しい男に成長した。
そんな彼の歌唱力も、この7年間でかなりのレベルアップをしている。
中堅クラスの歌手でさえ、KYUに勝てる歌唱力のあるボーカルは少ない。
そのKYUが作った
【ヨウォニ カチ(いつまでも 一緒に)】
と言う曲は、驚くほどスマートな歌詞で、メロディーはまるで遊園地の色んな乗り物を楽しんでいるかのような錯覚を与えるほど膨らみのあるもので!聴き惚れて仕舞うほどである。
今回の俺達の披露宴に駆け付けたTV報道陣も、驚きの表情で撮影を続けていた。
そして歌い終わった時には、場内割れんばかりの拍手に包まれていた。
「KYU君、それに元XYZの皆、こんな素敵な曲、本当に有り難う!」
『チャンス、ステージに上がって来るのら!』
「ギターが待ってるぞ!」
『3年半ぶりに一緒にやろうぜ♪』
「ヒョン(兄貴)、一緒に演奏して下さい。
在虎(ジェホ)従兄さん、一緒に歌いましょう!」
『それでは皆様、聴いてください。
ORJANGでARIGATOU。』
なんと、いつの間にか
ARIGATOU。
のハングル語バージョンが出来ていた。
楽しい時間は、あっと言う間に終わりに近づき、最後に俺とソナから皆への挨拶が終わり、4時間に及んだ披露宴は終了した。
「本日は、誠に有り難うございました。
どうぞこちらを!」
披露宴は日本日本スタイルなので、引出物を用意している。
韓国スタイルだと、引出物は出ないのだ。
全員での集合写真を撮影した後、帰ろうかなぁと思っていたら、
『チャンスさん、ソナさん、何か最後に一言下さい。』
と、マイクを向けてきたのは、TV局のアナウンサーだった。
「これからも音楽活動も続けていきますので、応援宜しくお願いいたします。
今日は本当に有り難うございました。」
と、簡単な挨拶だけをしてソナと一緒に本館へと続く廊下を足早に歩いていった。



