CHANCE 2 (後編) =Turbulence=






今日から3日間、テギルん家の金泉(クムチョン)食堂は定休日だ!



それも俺の為に。



明後日の誕生日に、俺は林 善雅(イム・ソナ)氏と結婚するのだ。



披露宴に出される料理は、新星グループの中にあるNSフーズ本社の総料理長である、宋 承鳳(ソン・スンポン)氏と彼の優秀な弟子達が担当してくれる事になった。



そしてテギルも、宋(ソン)総料理長等と共にコースのメインを担当してくれるそうだ。



披露宴に参加してと言ったのに、《俺は、これでも料理人だから料理でチャンスにお祝いしたい!》なんて、カッコつけちゃって!



李氏王朝時代の朝鮮宮廷料理の再現コースだと言っていたから、今から楽しみである。



宋(ソン)総料理長の話しでは、テギルの料理人としてのセンスもスキルもかなり高いそうだ。



料理に対する天性の感と言うものが有るとか言ってた。



そう言えば、俺がまだ中学生だった頃、宋(ソン)総料理長が《食材をみたら、何を作るべきか自ずと見えてくる!》って言ってたが、テギルも以前同じ事を言ってたなぁ………。



俺達の結婚披露宴の料理が、今から楽しみである。



両親と妹は、昨日のうちに来ている。



俺は、仕事の都合で一緒に来れなかった。



元XYZのメンバー達は、明日一緒に遣ってくると連絡が入った。



先月の半ば、ケントもギリギリでヒカルちゃんと一緒にフランスから戻って来た。



向こうでガッツリ勉強してきたぞ!って、相変わらずの元気さだ!



ヒカルちゃんは、なんとパティシエの大会で入賞したって言ってた。



最終選考まで残ったのだが、惜しくも3位だったって悔しそうだったが、大学卒業してから始めたお菓子作りで、いきなりの3位は大したもんだ。



久し振りにXYZの5人が揃ったので、彼女や奧さん同伴で俺のオムニ(お袋)の実家の韓国家庭料理の仁寺洞(インサドン)に集まり、再会を祝してパーティーを催した。



すると、どこから聞き付けてきたのか、桧山次長夫妻や天道新夫妻(去年、ゆしま食堂の一人娘の鎌田章子さんと結婚したのだ)、アボジ(親父)や白川GMまで集まって、結局アボジが全額払っていった。



オムニ(お袋)の実家で飲み食いしたんだから、アボジ(親父)が来たらやっぱそうなるよなぁ!



ケントは、パリの有名な三ツ星レストランテで、一通りの修業をしてきたと言ったが、本当はこれからも修業は一生涯続くのだ。



今回の渡仏は、一種の経験、そして本場の味を記憶してくる、そして目でも記憶してくる。



それだけなのだそうだ。



後は、最高の料理に近付いて行く努力、それが日々の課題だと、ケントは力説していたが、皆酔っ払ってきたので余り覚えていない。



多分、ケントも酔っ払っていたから、力説した事を覚えていないかも知れないが!



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今日は7月6日



明日は、いよいよ俺と善雅(ソナ)の結婚式だ。



ソナは、両親と共に早いうちから遣ってきて、衣装の最終チェックや、伝統的な婚礼式の段取りを勉強して、本番にそなえていた。



今晩は、ソナの家までスルメの仮面を付けて 函(ハム)と言う装飾を施した箱を担いで新婦の家まで練り歩くのだが、函(ハム)の引渡しと言って、 函の中には礼物や婚書紙(ホンソジ=新郎の父が新婦の父に送る結婚の礼状)などが入っているのだ。



新郎側の函(ハム)を担いだ友人達は、なかなか素直に歩かず、しょっちゅう立ち止まったりするのを、新婦側の友人達は、お金の入った封筒をちらつかせて家まで誘き寄せる遊びの様なドンチャン騒ぎが待っている。



家の前まで着いても、なかなか家の中には入らないのだ。



新婦側は、今度はお酒や料理等の御馳走を新郎側に振舞い、家の中に招き入れると言うものである。



日本では考えられない風習だが、結構面白いんだよ!



まぁ、かなりには近所迷惑だから、最近の人達は遣らないそうだが、遣ってみたかったんだよなぁ!