CHANCE 2 (後編) =Turbulence=






「チャンスや~!」



『お兄ちゃん!』



「オッパ~!」



『チャンス、分かるか?

おい、チャンス!

しっかりしてくれ!』



「オッパ~!ヒック ヒック

チャンスオッパ、ソナだよ!

分かりますか?」



『チャンスや~!目を覚ましておくれ。

分かるかい?

オムニ(母さん)だよ。

チャンスや~!』



「オハ‥‥‥ヨ‥‥‥俺‥‥生き‥てる‥‥‥皆、ただいま!」



『良かった!

チャンス、俺が分かるか?』



「アボジ(親父)、分かります。

スミマセン、心配掛けました。」



『何処か痛いところ有るか?』



「何か、全身が痛いけど、生きてる証ですよね!

左手が動かなかったんで‥‥‥」



『左手は、手首にヒビが入っていたよ。

後は、左の鎖骨と左の胸部肋骨が2本、左の大腿骨にもヒビが入っている。

それと、右 側頭部に裂傷と、後は細かいキズが無数に入っているから、暫くは入院な!』



「ソナとの結婚式は‥‥‥」



『延期に決まってるだろ。

って言うか、25分間心停止して、人口呼吸と心臓マッサージで息を吹き替えしたは良いが、3日間も眠っていたんだからな。』



「3日間も?

じゃあ今日は‥‥‥」



『5月1日のお前達の結婚式の当日だよ。

テレビでの結婚報告は、ひまわりTVに連絡して差止めしたよ。

って言うか、お前の事故のニュースで凄かったんだから。

車は、大炎上してるし、お前は心停止しているし、後ろから通りがかった車の運転手さんが110番通報してくれて、その時、後続の車が事故を起こさないように、かなりの手前まで行って発煙筒焚いてくれたりして、おまけにお前のギター迄運んでくれたんだぜ。』



「ギターは?」



『ケースは引きずった様なキズが入ってしまってるけど、ギター本体は全くの無傷だよ。』



「良かった!」



『何が良かっただよ!

自分の命がヤバイときにギターなんて!』



「ギターが俺を助けてくれたみたいな‥‥」



『何を言ってるんだい!?

しっかりしておくれチャンス!』



俺は、アボジ(親父)から封印の指輪を渡された。



口にくわえたままだったそうだ。



それからの毎日は、ひたすら力を開放して、自分の骨の再形成を促した。



2日目の夜には、左手は自由に使えるようになっていた。



翌朝からは、左の大腿骨と鎖骨と肋骨に再形成を促した。



この作業は、かなりの力を消耗するが、高 陳旭(コ・ジヌク)氏が言っていたように、一晩寝れば力は回復していた。



そうして1週間後には、全ての骨の再形成も終わり、普通に歩いたり物を掴んだり出来るように成っていた。



右 側頭部の傷は塞がり、順調に回復しているそうだ。



細かな無数の傷は、殆ど目立たないくらいになったのも1週間後である。



アボジには、脱出した方法を話していたが、今頃になって『心配かけやがって』と泣かれてしまった。



2週間後に退院してからと言うもの、ソナは片時も俺から離れようとしなくなった。



俺が視界から見えなくなるのが、不安でならないのだそうだ。