CHANCE 2 (後編) =Turbulence=






先月発売された俺の新曲、曲調はハードロック



タイトルは【Catch your heart】



カップリングも、勿論ハードロック



タイトルは【The melody of sorrow】



もうすぐ発売のもう1つのCD



タイトルは【Crushed tradition】



カップリング曲のタイトルは【Polestar】



カップリング共に、ハードロックだ!



この4曲と、去年の年末に作った2曲をライブツアーで演奏することになっている。



勿論、ナイトメアの曲も全曲演奏するけどね!



連日の練習で、ナイトメアの曲は全てマスターした。



自分の曲は勿論歌詞も頭に入っているし、メロディーだってバッチリ入っている。



1ヶ月以上、全国のライブ会場と東京を行ったり来たりして、新星MUSICの常務取締役としての仕事をこなしながらのライブツアーである。



だから、1ヶ所のライブが終わって次のライブ会場近くに取ってあるホテルに泊まること無く、東京に戻って仕事して、次の会場に行きリハーサルして本番。



そのパターンを繰り返していたのだった。



それゆえの睡眠不足や疲れが、徐々に蓄積されていたのだろう。



自分の体力を過信していたのも認める。



兎に角、東名高速の事故で今、俺は少しずつ意識を失いかけていた。



その時ふと、逆さまになった体を縛り付けているシートベルトを外したら助かるんじゃないかと言う思いが浮かんだ。



まだ車は、逆さまになったまま路面をソリの様に滑走している。



先程の回転で左右のドアが外れていた。



砕け散ったフロントガラスが顔を直撃したせいか、あちこちから血が流れ出している。



ヤバイ!シートベルトを外そうと思ったが左手が思うように動かないや!



やっぱもうダメかもなぁ……!



ソナ‥‥‥‥



サヨナラ‥‥‥‥



死にたくない‥‥‥‥



やっと滑走していた車が停車した。



さっきまでの路面と擦れる煩い音が止むと、何処からかポタポタと音が!



その瞬間、鼻先にガソリンの臭いがしてきた。



ヤバイ、燃料が漏れ始めてやがる!



俺は必死で右手を動かし、中指に嵌めている封印の指輪を口にくわえて外した!



頭の中で、



《シートベルトよ、外れろ!》



その瞬間、カチャッとシートベルトは外れ、逆さまになっている俺の体は下にズリ落ちていった。



俺は次に、車内に有ったギターケースを動く方の右手でしっかり握ってから



《ギターケースよ、出来るだけ車から離れろ!》



すると、ギターケースはドアの無くなった運転席からズルズルと外に滑るように動き出した。



ケースに掴まっている俺は、引きずられながらも車外へと脱出した。



そして、3秒後



ド~~ン!



と言う物凄い音と共に、ガソリンに引火した車は火柱を上げて、恐ろしい勢いで燃え始めた。



車からおよそ10m離れたところにいても、その炎の熱が体を襲う。



そして、完全に俺の意識は無くなった。