妻の雪美(ソルミ)は、会社発足も新居購入も快くOKしてくれた。
返済計画は任せて! って言うので、これで俺は料理に専念出来る。
丁度その頃、チャンスの妹のハヌルちゃんが婚約者の朴需(パク・ユ)氏の実家に向かったそうだ。
彼女達も、兄貴のチャンスと同じ時期に結婚するとか!
それなら、いっそのこと合同結婚式にすれば良いのに。
従兄の朴 在虎(パク・ジェホ)氏が運転する車に、従弟の朴需(パク・ユ)氏と婚約者のハヌルちゃんが乗って、向かった先はソウル特別市広津区(クァンジン区)チャヤンロの繁華街を抜けた住宅街。
こじんまりとした一軒家の前で車は停車した。
そこはKYUこと朴需(パク・ユ)の実家であった。
「ヒョン(兄貴)、ありがとうございました。」
『良いってことよ!
俺も叔母はさんに会うのは久しぶりだから、あいさつでもしていくかな!』
「允喜(ユニ)ヌナ(姉貴)は、まだ仕事から帰ってきてませんよ。」
『何を言ってんだよ!?
別に允喜(ユニ)に会いに来たわけじゃないぞ!』
「そうなんですか?
取り敢えず中に入りましょう。」
『あぁ、そうするか。』
「ただいま!」
『ユー、おかえりなさい。
ハヌルちゃんも一緒に帰って来たのかい。
おや?ジェホも!
あんた久し振りだね!
昌姫(チャンヒ)義姉さんは元気かい?』
「お袋は、相変わらず暇を見付けては陶芸教室に通って、訳のわからない物を作ってますよ。」
『義姉さんは、ストレスが溜まるといつも粘土を捏(こ)ねてたからねぇ。
貴方が確り(しっかり)したら、義姉さんのストレスも少しは減るのにねぇ。』
「俺はもう、充分に確り(しっかり)していますよコモ(叔母さん)。」
『うちのユー(KYUの事)だって、忙しいのに徴兵に行ってきたんだよ!
あんた、26才になんだよね!?
まだ行かないのかい!?
30才迄には後4年しか無いよ。
とっとと徴兵済ませて、あんたも長男なんだから、嫁さんを連れて帰って親を安心させてあげなきゃ。』
「そうですね。
頑張ってみます。」
『ジェホは、この後実家に帰るんでしょ!?』
「まぁ、その予定ではいますが‥‥‥」
『じゃあ、このキムチもって帰りなさい。
先月末のキムジャンで漬けたキムチが、丁度良い感じに漬かってきたから皆で食べてね!』
「はい、ありがとうございます。」
『義姉さんは、キムチ漬けるの嫌いだからねぇ!
うちは、私も允喜(ユニ)も料理好きだし、このキムチだって殆ど允喜(ユニ)が一人で仕込んで、私は白菜に塩を振り掛けただけだからねぇ。』
「そうなんですか?
そっかぁユニが漬けたキムチかぁ……」
『ヒョン(兄貴)、ヌナ(姉貴)が帰って来るまで待ちますか?』
「いや、今日はもう帰るよ。
明日また迎えに来るからな、昼過ぎで良いか!?」
『はい、お願いします。』
タップリのキムチを両手で抱えて、ジェホは車に乗って帰って行った。
「ハヌルちゃん、お久しぶりねぇ!
元気にしてた!?」
『はい、オムニム(御義母様)。
もうすぐ大学卒業ですので、論文を書いて過ごしておりました。』
「そうかいそうかい。
それで、卒業したら直ぐに結婚式をあげるかい!?」
『その事で今日伺いました。』
「そうなの。
じゃあ夕方にはうちの人も帰って来るから、それまでゆっくりしときなさい。
ユー、ハヌルちゃんを部屋に連れていって休ませてあげな!」
私はユーオッパの部屋に入ると、一気に緊張感から開放されて、ハーと深い息を吐きながら床にへたりこんで仕舞った。
温床部屋(オンドル部屋)のお陰で、真冬なのに床はとても温かく、さっきまでの緊張を溶かしていってくれてる気がした。



