CHANCE 2 (後編) =Turbulence=






その手紙には、



【長寿(チャンス)君へ

この二人は、私の妻方の親戚の子達で、高校時代にヤンチャし過ぎて、辛うじて卒業は出来たが、進学する訳じゃなく、就職先も決まっていない状態でした。

高会長が、それならと新星MUSICに試験も無しで入れて仕舞われたのですが、どうしても気掛かりでなりません。

それでお願いなんですが、この仁と義の二人を常務が鍛え上げてくれませんか!?

今は、常務も二足のわらじで大変忙しい事でしょう。

コキ使ってくれて構いませんので、一人前の新星スタッフに育ててくれませんか。

年寄りのお願いと思って、どうか宜しくお願いします。

張 希榮(チャン・ヒヨン)より】



押し付けられたよ!



「だいたいの話は分かった!

じゃあ、今日から俺の専属のスタッフだから、宜しく頼むな。」



『はい。分かりました。

それで、何からすれば良いですか?』



「そうだなぁ‥‥‥君達は何が出来るの?

特技とか資格とか無いの!?」



仁『僕は、大型バイクの免許を持ってます。

後は、ドラムが叩けます。』



「ウィドク君は?」



義『僕は、普通乗用車の免許と、電気溶接の免許が有ります。

特技は、ベースが弾けます。』



「そっかぁ。ところで君達はパソコン扱えるかい!?」



仁『僕は、エクセルとかワードとか表数計算なんかも出来ます。』



義『僕は、どちらかと言えばロジテックでデザイン画を作って遊ぶのが得意だったので、数字なんかは苦手です。』



「じゃあ、こっちのデスクに二人とも座って!

今から自分用の名刺を作って貰うから。

肩書きはどうするかなぁ‥‥‥‥仁哲(インチョル)君は、真面目にコツコツ遣るのが得意そうだから、取締役 常務付き 第二秘書で良いな!

義徳(ウィドク)君は、愛嬌があるし社交的そうだから、取締役 常務付き PR マネージャーでどうかな!

それぞれ取り敢えず100枚ずつ作ってくれるかい。

うちの会社のロゴは知ってるよな?」



仁『はい。知っています。』



「そのパソコンのマイ ドキュメントの中に入っているから、コピペして使って!」



仁『はい。

こんな感じで良いでしょうか?』



「あれ!?もう出来た?」



仁『雛型がありましたから、それもコピペして、名前を入れただけなんですが、ダメでしょうか?』



義『ヒョン(兄貴)、そんな面白味の無い名刺貰ったって、捨てられるのがオチだよ。

まずは、携帯でカメラを起動して、ヒョン(兄貴)笑って!

<パシャリ>

そして、パソコンで携帯の画像を取り込むだろ。

それを、新星グループの企業カラーの緑色で縁取って、こうやって名刺の右上に張り付ける。

名前は、日本語名を表に入れて、裏にハングルの英語表記と漢字表記を入れる。

その下に、フォントからハングル表記を探して、チ・インチョルと打てば、後は、印刷するだけだよ。

高(コ)常務、如何ですか?』



「なかなか良いじゃん!

それじゃあ、二人とも名刺の印刷が終わったら奥の常務室に来て下さい。」



と言って、常務付き秘書室の奥の扉を開けて、自分の部屋に戻った俺は、顔がにやけるのが止まらなかった。



あの仁哲(インチョル)君と義徳(ウィドク)君は、使えるぞ!



押し付けられたと思っていたが、さっきのやり取りだけでも、機転の利く面白い奴だと感じたが、コッソリと見た二人のビジョンは、俺を驚愕させるものであった。