アボジ(親父)の命令で、KYUとPJの新ユニット【ORJANG】のプロデュースを遣りながら、俺自身のセルフプロデュースも頑張っている。
頼りになるのは、俺の専属の岩城現場マネージャーと、ORJANGの現場マネージャーの安田さんだけだ。
安田マネージャーは以前、美racle/Ladyのマネージャーをしていたが、彼女達も韓国へ戻ったので、ORJANGの担当に付いて貰ったのだ。
忙しい日々を過ごすうちに、紅葉の時期も終わり、本格的な冬の到来である。
ミュージックフェスティバルも大成功で、今度はORJANGのクリスマスライブである。
俺は、ハコ(会場)を押さえたりチケットの手配や、CMの段取りで毎日が忙しい。
ソナや妹のハヌルは、卒論の追い込みで苦しんでいる。
経済学部経営学科の二人は、TPP( 環太平洋戦略的経済連携協定)についてを、全く正反対の方向からアブローチした卒論にしている。
ソナは、TPP賛成意見がメインとなっており、ハヌルはTPP反対意見がメインとなっている。
お互い、メリットやデメリットを事細かく抜粋していき、経済の歴史から始まり、現代の貿易経済の発展までが、見事な戦術や戦略の上に成り立っていると言う事を色んな観点から調べて書き上げられていた。
完成した卒論を、仮に二人でひとつの論文としてみれば、また面白いだろうが、個人論文なのでそういうわけにもいかない。
兎に角、二人とも最後の詰めに入っているから結構忙しそうである。
翌朝、新宿の日本支社に出勤すると、常務室の前で2人の男性が俺を待っていた。
俺の顔を見るや深々と一礼して、
『お早うございます常務。』
「お早うございます。
どちら様?」
『初めまして!
池田仁哲(いけだまさあき)と申します。
本名は池 仁哲(チ・インチョル)と申します。』
『私は、池田義徳(いけだよしのり)と申します。
本名は池 義徳(チ・ウィドク)と申します。』
「仁君に義君だね!
まぁ、中に入って!」
『『お邪魔します。』』
「どうぞ!
さぁ座って!」
『それでは失礼します。』
「君達を見るのは初めてだよね!?
要件は?」
『僕達は、元常務の張(チャン)相談役の遠縁にあたるんですが、今年の4月に縁故就職させて頂いたんです。
僕達は高卒で、昨日まで庶務課で備品類の管理をしてました。
昨日の終業後、張相談役に呼ばれて行ったら、そこに李支社長も居て、今日から高山常務付きになりました。
こちらが、配属の異動命令書です。』
「そうですか。
ところで君達は双子だよね!?」
『はい。
似てないでしょ。
二卵性の双生児なんです。
それから、これを張(チャン)相談役から預かってきました。』
と言って、1通の封筒を差し出してきた。



