俺達はコーヒーを飲んだ後、カギを持って建物の一番南の端に作られた、地下へと続く階段を降りていった。
そこは8畳程の、2階まで吹き抜けのスペースが在る。
天井が2階部分に有るので、南側にある窓から光りが差し込み、地下1階だが全然それを感じさせない。
そのスペースは、ソファーやテーブル、ミニ冷蔵庫や小さな食器棚や水回りも有る。
8畳のスペースの右奥の扉はトイレになっており、正面の通路を進んでもうひとつの右側の扉を開けると、そこは8畳程の調整室になっており、その奥が金魚鉢と呼ばれる12畳程のスタジオになっていた。
調整室を出て、先程の通路を更に奥に行くと、2m先の突き当たりには頑丈そうな扉がある。
扉の鍵穴の上に有るカバーをパカッと開け、0を8回プッシュするとカチッと音がした。
が、カギを差し込んでもうひとつのロックを解除しないと開かない様になっていた。
プッシュボタンの横にも、同じ鍵穴が有り、先程のカギを差し込んで右にカチッと回してみた。
すると、設定画面が現れたので、暗証番号を00000000から10303991に変更した。
『オッパ、これって何の番号?』
「あれ?ソナは、分からないのかい?」
『全然分かんない。』
「ソナの生年月日を逆から入力したんだよ。
1993年03月01日だからね。」
『そっかぁ!これなら忘れないわ。』
設定した後は、もう一度左にカギを戻して、設定完了させた。
今一度、確認の為に暗証番号を打ち込んで開くかどうかチェックした!
問題なく新しい番号で扉は開き、二人で一歩前へと足を踏み出した。
暗かった奥の通路は、センサーで自動的に明かりが付いて、階段を照らしてくれている。
ゆっくりと10数段の階段を昇った先には扉が有りそれを開くと、そこは16畳程のフローリングの寝室になっており、ベッドやドレッサー、ミニテーブル等が置かれてあった。
次は、他の部屋も探索することにした。
最初ソナは、恐る恐る確認しながら他の部屋も見ていたが、そのうち慣れてきたのか、我が家同然の様に寛いでいた。
駐車場一体型の3LDKで、平屋の鉄筋コンクリート工法で出来ている。
間取りは、韓国の韓屋(ハノク)の様に全ての部屋がリビングを通らないと出入り出来ないようになっている。
カウンターキッチンには、IHクッキングヒーターが備え付けてあった。
客間の床の間には、野川観の《奥入り瀬》の[秋]と[夏]の一対二幅の掛け軸が掛かっていた。
もう一部屋は客間と言うよりは、誰かが泊まりに来ても大丈夫な様に、ゲストルームとなっていた。
ここは、ハヌルちゃんとKYUさんの為に使えそうだわ!とソナが考えていると、チャンスオッパも同じ事を考えていたんだと言う。
一旦、元の家に戻って、食事をすることになった。
先程の奥の寝室にあるウォークインクローゼットっぽいドアを開けて、中に入る。
このクローゼットの扉にもロックが掛かるようになっていたので、一応用心の為に先程のカギを差し込んでみた。
思った通り、そのカギを右に回してみたら、カチャリと乾いた音と共にロックが掛かった。
階段を降りていき、数歩のところに有る扉の鍵穴に、先程のカギを差し込んで右に回し、暗証番号を入力するとドアが開いた。
部屋に戻って、カギをバッグに仕舞ってからキッチンに行った。
ソナも直ぐに遣ってきて、
『何が食べたい?』
って聴いてきたので、素直に
「ラザニア。」
って答えたら、直ぐに却下されて仕舞った。
『出来れば、もっと簡単なのをお願い!』
と言う事で、結局グリルドチキンになってしまった。



