4月4日に終了した、G-1グランプリの第1セクション。



その数日前



今日は、4月1日



Seijiさんの新たなスタートを迎える日である。


篠田音楽ファクトリーを円満で退社して、有楽町に自分の事務所を設立したのである。



ビルの入り口には、所せましと御祝いの花輪が立ち並び、エレベーターで4階に上がると、広いエントランスフロアーにも沢山のフラワースタンドがあった。



エントランスの奥にある扉の横には受付カウンターが有り、そこに居るスタッフに招待状を見せて、記帳して中に入って行った。



「おめでとうございますSeijiさん。

終に独立しましたね!」



『まぁね!

それでも、前の篠田会長の事務所に居たときでも、共同出資だからタレントやりながら社長もしてたからな。



今度は、ナイトメアのメンバーにも旨味のある人生を送って貰いたいし、色んな経験もしていきたいから独立する決心したって感じかな!』



「そうですかぁ。

これからも楽しみにしています。

うちの会長(俺の親父)も、もうすぐ来るそうですよ。

これは、俺からの御祝儀です。

本当におめでとうございます。」



『ありゃあ、チャンス君、奮発したねぇ。

御祝儀袋が立つ程、御祝儀を入れてくれたんだ。』



「Seijiさんには、これでも少ないくらいお世話になりましたから!」



『うれしい事を言ってくれるねぇチャンス君は!

ところで、彼女さんは!?』



「うちの会長が妹とソナを連れてくるそうです。

テジュンやジョージも、それぞれの奥さんと一緒に来るそうです。

ドラムのケントには連絡入れたんだけど、修行中でフランスから帰って来るのは来年の春だそうなんで、その時に改めて挨拶に来るそうです。

KYUは、今は韓国に拠点を置いて頑張ってますので、また日本に来たときに、一緒に伺いますので。」



『みんな、それなりに忙しく遣ってるんだなぁ!

そう言えば、桧山マネージャーと奥さんの杏奈さんも来てるぜ!』



「へぇ!いつも行動が早い人だから、もう来てると思ってました。

さっき、BIG DIPPER のメンバー全員で来てましたよ。

何か、音楽以外で接点無さそうな感じだけど、交流有るんですか?」



『何言ってるんだ?

リーダーの栗田は、俺の高校の1年下の後輩だぞ。

学生時代は、一緒にバンド組んでいたのは有名な話なんだけどなぁ…!』



「そうだったんですか!

じゃあどうして一緒にデビューしなかったんですか?」



『奴の音楽と俺の音楽では、全くベクトルが違ったんだよ。

あくまでもビジュアル系のメタルパンクをベースにしたロックを遣りたかった俺と、ジャズやブラコンやブルースをベースにしたロックを遣りたかった彼奴では、同じ線上に立てなかったって訳!』



「まぁ、ビジュアルにこだわったSeijiさんと栗田さんでは、一緒に出来ないですねぇ!」



『それは、俺が不細工だって言うのかいチャンス君!?』



「アッ、栗田さん!

違いますよ。

ただ、栗田さんは、Seijiさんみたいなメイクして歌うのが苦手な人かなぁって思ったもんで。」



『そりゃそうだろう!

小川先輩(Seijiさんの事)みたいなメイクしたら、俺だけコミックバンドになってしまうだろう!』



「ハハハ!

栗田さんのライヴに行ったこと有りますけど、時々コミックバンドみたいな事しているじゃ有りませんか?」



『チャンス君、本当なのかい!?

栗田は、昔からそんな事やらない堅い奴なんだぞ!』



と言いながら、Seijiさんが栗田さんを見ていると、栗田さんが段々赤い顔をしてうつ向いて仕舞った。


あのライヴは、間違いなくSeijiさん達ナイトメアをパロディにした余興だったもんなぁ。



Seijiさんには知られたくなかったかな!?



すんません栗田さん!



Seijiさんは俺に、いったいどんなライヴだったんだよ!?としつこく聞いてくるし‥‥‥



20年近く経った今でも、この二人は先輩と後輩なんだなぁと思う。



と、そこへ俺の親父が遣ってきた。