コンコンッ!



「失礼します。」



『やぁチャンス君、Gold Stringsのフォーマットは手にいれたが、なかなか思うようにいかないって!?』



「頭を抱えてます。

アメリカの大会は、かなり最新のコンピュータなんかを導入して遣ってましたが、こっちは今回の大会が初の試みだけに、困ってます。

最新の機器を導入して転けたらどうしょうかとか、色んな事を考えてしまいます。」



『何言ってるんだ。

既にフォーマットの購入に数千万円使っている事を忘れてないか!?

それに比べたら最新の機器だかなんだか知らないけど安いもんだろ!

それに、転けること前提に企画した訳じゃないだろう!?

やると決めたなら、最善を尽くして、後は見守るだけ。

そうじゃないかい!?』



「確かにそうですね。

初めての自分の持ち込み企画なもんで、気負いすぎてました。」



『お前の親父さんなんか、初めて日本にこの日本支社をおっ建てた時なんか、今のお前の心境を毎回背負って、この会社を大きくしていったんだからな。

それも、今のチャンス君と同じ年にな!』



「そうでしたね。

ところで、聞いたこと無かったですが、白川GMとうちのアボジ(親父)って、どこで知り合ったんですか?」



『なんだ!知らないのか!?

俺は元々、民団の青年部で働いていたんだぜ。

お前の親父さんが日本に来て、会社を興そうって時に引き抜かれたんだよ。』



「また何で?」



『まだ日本語がカタコトだった親父さんは、通訳が欲しかったみたいで、俺はハングル語も日本語も分かるからって、良く民団に来ては一緒に話したりしていたんだ。

それで、民団の仕事の合間に新星MUSIC日本支社へ遊びに来てるうちに、気が付いたら転職してたよ。ハハハ!

最初の新星MUSIC日本支社って、この場所にプレハブの2階建てが在っただけだからな。』



「エッ!?そうなんですか?」



『そうさ!

ほんとにこれが芸能事務所!?って思ったんだから。ハハハ!』



「ハハハ!って。良くそんなんで転職出来ましたね!?

将来の心配とか無かったんですか?」



『無かったね!

俺より1才しか年離れてないのに、考え方は凄く進歩的で、尚且つ大胆かと思えば繊細な部分もあって、頭も切れる凄い人だと感心したから。

付いていって間違いないって思わせてくれる人なんだよ、お前の親父さんは。』



「そうなんですか。

その当時の人って、まだこの会社に居るんですか?」



『何言ってるんだ?

創業当時のスタッフなんて、全員一人も欠けずに残っているさ。

本堂だって西川だってそうだし、李支社長や金専務だって、それに、定年した張(チャン)元常務だって定年退職じゃなくて、最高顧問として、今でもこの会社の為に働いているしな。

まだまだ沢山居るぜ。

うちの社長は、【人】を大事にしてきたからこそ、ここまで会社を大きく出来たんだと思うぜ。』



「そうですね。

俺も頑張らなきゃ!」



『頼むぜ二代目!』



「はい。」



と、そこへ



『失礼します。白川GM、高山常務お客様です。』



と、白川GMの秘書の宋氏(ソンさん)がトビラを開け、その後ろから男性が入ってきた。



『お疲れチャ~ン!』



相変わらず軽すぎるこの声は‥‥‥