夕方になって、本郷のマンションに妹のハヌルと俺の婚約者のソナが、帰って来た。



と言っても、俺は音楽番組の打ち合わせに出掛けていないのだが。



そんなことはお構いなしで、勝手知ったるなんとやら!



先ずは床暖房のスイッチを入れたら、二人で早速料理に取りかかっている。



とは言え、二人供料理は苦手なので、買ってきた食材はブツブツ・ザクザクと切って、あとは出汁昆布の入った鍋に入れるだけのもの。



要するに水炊きである。



以前俺がソナに教えた簡単料理の1つである。



兎に角、最初に骨付き鶏肉のぶつ切りを先に入れて2時間クツクツととろ火で炊いておけば、あとはその中に野菜を放り込めば出来上がりだ。



ソナは、それを教えた通りに実行して準備していた。



ハヌルも、切った野菜を皿に盛って俺とKYUの帰りを待っていた。



「オッパ(恋人が彼氏を呼ぶときに用いる呼称)達まだかなぁ♪

早く帰って来ないかなぁ~。」



『ソラ(ハヌルの通称名)、KYUさん明日韓国に戻っちゃうじゃない!?

また2週間会えないね!?』



「うん。

韓国に活動拠点を置いてから、まともに会話できてないし!

行ったり来たりで忙しすぎるから、たまに日本に戻ってきても、忙しそうな感じで電話すら出来ないんだから。

たまに会っても疲れてるみたいで、直ぐにウツラウツラし始めるから、体壊さないか心配なんだ!」



『今年1年は辛抱しなくっちゃ!?

この1年を乗りきれば、来年からは日本に拠点を戻すからってチャンスオッパも言ってたよ。』



「だよね。

まぁ、前のXYZの時だって、2週間や1ヶ月ぐらい会えなかったのだってしょっちゅうだしね!」



『言われてみればそうだね。

韓国に居ようが日本に居ようが、会えないときは会えないし、会えるときは会えるか!』



「そうそう。

だから私たちは、会えないその時間を使って出来ることを遣っておこうね!?」



『料理とか!?』



「料理‥‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥何でもっと早い内から料理の勉強しなかったのかなぁ?」



『私も。


いつか、チャンスオッパに美味しい手料理を食べさせて、【美味い!】って言わせたい~!』



「私もユーオッパ(KYUの事)に【マシイッタ!(美味い!)】って言わせたい~!」



と、そこへ



ガチャ ピッ ピッ ピッ ピッ



カチャ



「『ただいま!』」



「チャンスオッパお帰りなさい。」『ユーオッパもお帰りなさい。』



「オッ、暖かい!

やっぱ、仕事終わって帰ってきたら、出迎えが有って、明かりがついているって言うのは良いね~!」



『そうですね。

ハヌル、会いたかったよ。』



「俺も、ソナの事ばかり考えてた。」



『二人供、いつから口が巧くなったのかしら!?』



なんて冗談を言いながら、食事してシャワー浴びて、それぞれの部屋に入って朝までたっぷり愛し合った2組のカップルだった。



翌朝は、ソナもハヌルも講義が午後からなので、のんびりしていた。



KYUは、昼の便で韓国へ経つので、俺は準備をしてKYUを車に乗せて成田空港へ向かった。