葛西臨海公園に到着すると、巨大な駐車場の入り口で入場料を支払い、眺めが良さそうな場所に駐車した。
まだ辺りは暗く、時計を観ると6時少し前だった。
今日の日の出は、6時50分くらいなので、まだ1時間ほど待たなければいけない。
俺達は、車の中でそれぞれ時間を潰していた。
その時、遠くの方から嫌な音が聴こえてきた。
どう少なく見積もっても40台以上のオートバイの音がしているのだ。
まさか、この時代にまだ暴走族がいたとはねぇ!
そして、料金所を無視したやからは、
次々と駐車場の中に雪崩れ込んで、まだ殆ど車の止まっていない広い駐車場の中をグルグルと旋回している。
頭にきた俺は、封印の指輪を外して、駐車場内をグルグルと回り続けるオートバイの点火プラグを次々と壊していった。
1分もしないうちに全てのオートバイが沈黙した。
彼等は訳が分からないので、あぁだこぉだと言いながら薄暗い中、懐中電灯を片手に騒ぎ始めた。
段々とうるさくなってきだしたので、取り敢えず目の前に居る数人の暴走族の少年達の頭の中へ
【たった今から、この公園を後にして、オートバイを手で押して自宅まで帰りなさい!】
と、直接命令した。
すると、5人程の少年が
『俺、バイク押して家帰るわ!』
と口々に言って、公園から出ていった。
残った連中にも、順々に同じ命令をしていった。
30人程、力を使って帰らせていたら、残った10人は力を使わなくても勝手に帰って行った。
『さっきの人達って、何がしたかったんですかね、ヒョン(兄貴)?』
「だよな!
何かのパフォーマンス?」
と、惚けてみせた。
『お兄ちゃん、そこの明太子のお握り取って!』
「ほいよ!
ジョージ、那奈ちゃん、何が良い?」
『おいらはシーチキンが良いにゃ!
那奈ちゃんはオカカだって!』
「ハヌル、これ後ろに回して!」
『ヒョン(兄貴)、コーラ有りますか?』
「ダ~メ!
KYUは歌手なんだから、炭酸飲料や冷たい飲物は、出来るだけ避けないとプロじゃないよ。
KYUは、これ。」
と言って、ホットミルクティーの缶を渡した。
『ユーオッパ、しょうがないよ。
喉は大事にしないとね?』
って妹のハヌルが笑顔で言うと、KYUはニッコリ笑いながらも、少し照れたように頬を赤らめていた。
そして、しばらくした後
東の空には、大きくて真っ赤な太陽が昇り始めた。
車から降りた俺達は、携帯で記念撮影したりしながら、初日の出を堪能して帰路に着いた。



