久し振りに実家に戻ると、何だか随分と懐かしく感じた。



今日帰って来る事は言ってあったので、KYUもソナも来ていた。



台所で、オムニ(お袋)と婚約者のソナと妹のハヌル(通称名はソラ)の3人で、夕飯の準備中であった。



「ただいま!

ソナ~!

会いたかったよ~!」



『チャンスオッパ!

私も会いたかったよ~!』



『お兄ちゃんもソナも、玄関先でいちゃつかないの!

早く入っておいでよ。

もうすぐご飯だよ。』



「おう!

分かった!」



大きなダイニングテーブルに、アボジ(親父)、オムニ(お袋)、KYU、ハヌル、ソナ、俺の6人で座る。



テーブルの上には、大好物のカンジャンケジャン(蟹の醤油漬け)やカムジャチヂミ(ジャガイモのチヂミ)、プルコギ(焼肉)やテンジャンチゲ(豆腐鍋)等が並び、サンチュ(チシャ)やナムル(オヒタシ)、数種類のキムチや青唐辛子と共にテーブルを賑わしている。



『お兄ちゃん、それで優勝賞金は何に使うの?』



「もうないよ。」



『エェ~?

もう使っちゃったの!?』



「寄付してきた!」



『寄付って!?』



「あの大会で仲良く成ったバンドの人達が、自分達の音楽で親の居ない子供たちの面倒を見てるんだよ。

毎月、チャリティーコンサートまで遣って、収益の殆どで孤児院を遣ってるんで、そこに寄付したよ。」



『凄い大変そうねぇ。

ファイナリストのもう一人のオジサンも上手だったけど、開票結果はお兄ちゃんの方が2000票も上まってたもんね。』



「あの彼とザ・キングバードのメンバーと昨日の朝まで飲んでいて、飛行機の中でずっと気持ち悪かったんだから!

もう当分ワインは欲しくないよ。」



『チャンスオッパ、お酒の飲み過ぎには気を付けてね。』



「ありがとうソナ。」



『ヒョン(アニキ)、あの最後のミッションで演奏していた曲を下さい。

何度も何度も聴いて、とても気に入りました。

歌詞も書いてみましたから、後で見てくださいね。』



「そうかい!?

それじゃあ、明日スタジオに行こうか?」



『お願いします。

明日は僕もオフ日なんで!』



「OK!」



『ところでチャンスや!

飛行機がハイジャックにあったって、大丈夫だったのかい?』



「丁度、機内に凄い刑事さんが乗ってて、あっという間に逮捕したんだって!

私は、機内放送にも気付かずグッスリ寝ていたんですけどね。」



と誤魔化しておいた。



実際、搭乗客の中にニューヨークから乗った刑事さんが居て、記憶をすり替えておいたのだ。



犯人達とキャビンアテンダントとキャブテンと刑事さんに、それぞれ記憶を操作して、俺の事は、ずっと寝ていた事にしてある。



今じゃ、あの刑事さんはヒーローに成っているだろう。



俺が観た、あの刑事さんのビジョンでは、実際にも凄腕の刑事さんで、格闘術にも優れている人物だった。



家族で話に花を咲かせながらの食事も終わり、ソナは俺の部屋に待って貰って、俺はと言うとアボジ(親父)に呼ばれて書斎に来ていた。



『ハイジャック犯を捕まえたのはチャンスだな?』



「はい、アボジ(親父)。

兎に角、早く日本に帰りたいのにショットガンなんか振り回すから!

バレないように、ちゃんとしておきましたので。」



『気を付けるんだぞ!

何処で誰が見ているか分からないからな!』



「はい、分かりました。

それでは、アンニョヒ チョムシプシオ。(お休みなさいませ。)」



『あぁ、チャルチャゴラ!(お休み!)』