『ヘイ、ミスターチャンス、カム イン!』
「どうも。」
通されたところは、普通のマンションをオフィースした感じで、中はざっと4LDKの間取りだ。
先程の巨体の男に案内されて通された部屋は、ソファーとテーブルとパソコン台だけしかない、6畳程のフローリングの部屋だった。
待つほどの事も無く、直ぐにロバートが入ってきた。
『ヘイ、ミスターチャンスどうしたんだ急に?
ここは、ジャッピー(日本人をバカにして呼ぶときに用いる)の来るところじゃ無いぜ!』
ムカッとしたが、出来るだけ平然を装った俺は、ロバートの過去のビジョンを覗いて見た。
案の定、あの2人の金髪女性とは知り合いであった。
ライヴの打ち上げ会場に、一緒に盛り上がっているビジョンが見えた。
しかし、どうもしっくりこなかった。
いくらロバートのビジョンを観ても、盗まれたギターと結び付かないのだ。
「あなた達が、俺の事を敵意剥き出しでいるのは勝手だけど、ちょっとこの画像を観るだけ観てくれませんか?」
『これは、俺の幼馴染みのジャッキーと妹のキャロルだが、この2人がどうかしたのか?
ジムの野郎とデキたのか?』
「そんな色っぽい話じゃ無いんですよねぇ。
彼女達は、偽名を使って俺達に近付き、ジムのメタルフロントのギターや10,000$のキャシュなんかを盗んでいったんですよ。
あのギターは、20万ドル以上する品物ですから。
疑って悪いんですが、もしかしてミスターロバートも関与しているのかと思ってここへ来たんですが、どうやら知らなかったみたいですね!」
『あいつらが、そんな事するはずがないだろ!
昔から良く知っているけど、黒人の俺達の事を差別したり区別したりしないし、彼女達の親は市議会議員まで遣ったちゃんとした親だぜ!』
「すみませんが、防犯カメラにも写っているんですよ。」
『それなら、今からここに呼ぶから白黒着けようじゃないか?
もし、彼女達が白ならよ、お前は俺の大事な幼馴染みを泥棒扱いした罰としてハドソン川に沈んで貰うぜ?』
「OK!
じゃあ、もし仮に彼女達が盗んでいたら、ロバートは俺に何をしてくれますか?」
『お前の言うことが、仮に本当だったら、彼女達の代わりに俺がイギリス野郎(ジムの事)に土下座でも腹切りでもしてやるさ!
勿論、盗んだと言われる物は全て返してやるよ。
ヤッパ、ハドソン川止めだ!
ジャッピーの腹切りを見せろ?』
「別に良いけど、俺はコーリアン(韓国人)だぜ!」
『どっちも一緒だよ、イエロー(黄色人種をバカにした呼び方)が!』
「良くそんな言い方が出来ますね!
私が貴方達の事をニガー(黒人をバカにして呼ぶときに用いる)なんて呼んだら腹が立つでしょ?
貴方は、そんなに人類を色で分けて自分達と違うカラーをバカにしたいのですか?」
『熱く語ってんじゃねぇよ!
お前が、お礼幼馴染みを泥棒扱いしやがるからいけないんだよ!
それから、2度とニガーなんて言わせねぇからな!』
「分かりましたから、早く二人を呼び出してくれませんか?
白黒ハッキリさせるんでしょ!?」
『いちいち指図すんな!
今から呼んでやるよ!
覚悟しとくんだな!』
ロバートは携帯電話を取り出すと、
『ジャッキー、俺だ!
元気だったか?
妹と一緒に遊びに来いよ!
旨いもん食わして遣るぜ!
あぁ! そうそう!
おぅ! 分かった!
じゃあ20分後にな!』
『聞いた通りだ!
お前の処刑は20分後に決定な!
おい、ジェイク!
このコリアンボーイが逃げない様に見張ってな!
俺はリビングに居るからよ!』
ジェイクと呼ばれた先程の巨体の男は、俺の正面のソファーにドカッと、座り込むと、
腕組みをして俺の方を睨んできた。



