会場のエントランスに出ると、ABC放送は勿論の事、日本からはひまわりテレビ、韓国KBS、そしてジムの母国イギリスからは、最大のテレビ局3チャンネルのITV(独立テレビ)の取材カメラも並んでいて、次々に質問され、目の前のホテルにたどり着いたのは30分後だった。



ホテル前の取材陣が居なくなったのを見計らって、俺はジムと二人で近くのレストラン バーへと向かった。



テーブルに付くと、ジムはメニューを見ながら、



『ヘーイ チャンス、何食うんだい?』



「うまけりゃ何でも食べますよ。」



『なるぼどな!

じゃあ、適当に注文するぜ!

飲みもんは、ビールで大丈夫か?』



「あぁ、ビールで大丈夫ですよ。」



『ボーイ、このシーフードサラダと鹿肉の香草焼き、後は鶏肉の煮込みスープとビールを2つ頼むよ。』



「かしこまりました。

直ぐにお持ち致します。」



『ミスターチャンス、ユーはいつからギターをやってるんだい?』



「ハッキリとは覚えていないのですが、3才になる前から弾いてました。

親父が子供用のアコースティックギターを買ってきたのがきっかけだってお袋が言ってましたよ。」



『なんとまぁ、そんなに小さい時から遣ってたんだ!』



「ミスター ジム、貴方は?」



『俺かい?

俺は、14才の夏からだ!

色気付いちゃってさ、女の子にもてようと、兄貴と二人で近所のギター教室に通い始めたのさ!

サマーバケーションをタップリギターの練習に費やして、兄弟で競い合いながらの練習だから、上達も早かったぜ!

1ヶ月後で、【スモーク オン ザ ウォーター】が、どうにかこうにか弾けてたんだけど、2ヶ月後には、二人とも【ハイウェイスター】を軽々と弾いてたよ。』



「大したもんですね!

取り敢えず、乾杯しますか?」



『オウ、乾杯!

1週間後の結果発表まで、それまではのんびり羽を伸ばそうぜ!』



「ですね!」



『さぁ、食おうぜ!

ここのシーフードサラダは、魚介類タップリで、ドレッシングはこの店オリジナルの特製だから、驚くほど旨いんだから!』



「詳しいね?」



『あぁ、ABCの撮影クルー達から教えて貰って、この店に来るのはこれで3度目だよ。』



「確かに、この値段でこのグレード、それにこの旨さ!

半端なくいけてる!

美味しいよ本当に。」



旨い料理を食べながら、ジムと何時間も音楽の話で盛り上がっていた。



気が付けば、かなり飲んだおかげで、二人とも気持ち良く酔っぱらっていた。



時刻は現在、午後6時



ランチタイムに来ていたから、かれこれ5時間もいる事になる。