それから15分程して、No.7のブースから堺皇成が出てきた。
悲壮感をたっぷり漂わせて、疲れきった顔をしていた。
なんか、話し掛けづらい。
それでも、俺も一応新星MUSICの人間だ!
頑張って交渉しなきゃ。
「堺君、お疲れさん!」
『あぁ、チャンス君。
どうだった?
俺、もしかしたらダメかも‥‥‥。』
「一体、何があったんだい?」
『3分間のクラシックって何がどうすりゃ表現できるか、頭が‥ショートしそうで‥‥あぁ、落ちたかも!』
「大変だったみたいだね!
クラシックかぁ…!
解りやすいのなら、近代クラシックって感じだけど、 それらは【12音技法】での作曲なんかが良く取りざたされるけど、その他にもジャズやブルースなんかの影響をうけたクラシックもあるけど、3分間だけなら、オーソドックスに、 調性(協和音)的な音響や規則的なリズムで、メロディを奏でれば良かったんじゃないかな? 」
【12音技法(=ドデカフォニー)とは、音階内の音がなんらかの機能を有した従来の音組織に代って、オクターブ内の12個の音を平等に扱い、隣り合う2音の音関係のみを重視する作曲技法のことだよ!】
『ヤッパそうだよなぁ。
奇を衒(テラ)って、ヘビメタルテイストのクラシック遣っちゃったよ。
って言うか、それしか出来なかった!』
「それはそれで有りなんじゃないかな!?
クラシックって基本は作曲者の感性が生み出すメロディなんだから。」
『だと良いんだけど。』
「大丈夫だって!
ところでさぁ、お願いが有るんだけど、真中マネージャーと3人で話し出来ないかい?」
『良いんだけど、マネージャー多分まだ寝てるかも?』
「エッ?
タレントが働いているのに?」
『そうじゃ無くて、こっちで水にあたったみたいで.アメリカに来てずっと調子が悪いんだ。
病院行って診て貰ったら、水あたりだって。
正露丸飲んで、死んだように寝てる。』
「そりゃ大変だなぁ!
取り敢えずじゃあ、一旦ホテルに戻ろうか?」
『そうだね。
ところで、話しって? 』
「うちのグループの会長から頼まれて、俺と堺君の対談の出演依頼とギャラ交渉!
出演依頼の方は、Seijiさんが堺君さえOKなら問題ないって!
ギャラ交渉は、真中マネージャーとしてくれだって。」
『小川社長(Seijiさんの事)も、案外適当だからなぁ~。』
「それわかる。
前にも、俺に曲を書いてくれて、この曲でミリオンセラー出来たらもう1曲書いてあげる!とか言って、本当にミリオンセラー達成したら、すげぇじゃん!その曲、俺も歌うわ!なんて言って、新しい曲書いてくれないし、俺にくれた曲でSeijiさんもシングル出すし、ビックリしたよ。」
『ヤッパ超適当!
うちの姉貴も、良く社長と結婚したんだ。』
「まぁ、でもSeijiさんは良い男だからなぁ。
男の俺から見ても、カッコいいし。
あの軽さは、時々ついて行けないところあるけどね!」
『だね!
ところで対談は、俺はOKですよ。
ギャラは、どうすっかなぁ?
マネージャーの部屋に行ってみようか?』
「だね!」
コンコン!
『真中マネージャー、失礼します。』
ホテルの真中マネージャーの部屋に入った俺達は絶句した!



