時刻は、夕方の6時を少し回った頃、微かなうめき声と共にアボジ(親父)が目を醒ました。
「アボジ(親父)、気分は如何ですか?」
『まだ、微かに麻酔が効いているから、頭がモワァッ~ンとしてるよ。
で、どうだった?
やっぱりダメだったろ?!』
「‥‥‥はい。
でも、一つ考えてる事があるんですけど。」
『手術前に俺の背中を擦りながら考えてた事だろ?
お前の思念が強すぎて、俺の頭ん中に流れ込んできたぞ!
お前、アニメの見すぎじゃないのか?
今どき、ホイミって!
ドラクエ世代なのは分かるけど、そんな事出来る訳無いだろ?』
「ですが、私達の力だって、説明出来ない事でしょ?
実際に、瞬間移動や物体移動、ビジョンの力だってサイコメトリーの力だって説明出来ないけど使っていますよ。」
『確かにそうだけど、ホイミって言うのは治癒能力の促進だろ?
あれはまた別物だろ?
物体から読み取るとか物を動かすとかじゃなくて、病気を治すって言うのとは根本的に似て非なるものであって‥‥‥‥‥‥』
「アボジが言いたい事は確かに分かります。
只、遣りように寄っては今ある俺の力の応用編みたいなものなんですよ。」
『応用編?
それってどういう意味だい?』
「物体の瞬間移動が使えるんであれば、アボジ(親父)の体の中の癌細胞だけを別の場所へ瞬間移動させるとか、脳に命令して行動をコントロール出来るのだから、癌細胞に命令して消滅して貰うとか、なんとなく出来そうじゃないですか?」
『そう言われて見ればそうだけど、実際問題そんなことが可能だろうか?』
「以前、おれが階段から落っこちて入院したの覚えてますか?」
『あたりまえだよ。』
「あの時、頭のキズの治療の為に髪の毛を剃ったでしょ?」
『あぁ、けっこうデカイハゲになってたよな!』
「あのあと、俺は自分の頭皮の細胞に命令して毛根の成長を早めるのに成功したんですよ。
大体、1ヶ月ぐらい掛かるところを1週間で元通りに生えそろったんですから。
その他にも、空手の試合中に内出血した足の爪だって、内出血部分の血だけを瞬間移動で抜き取って、1時間後には完治していたんですよ。」
『あきれたなぁ~!
そんなことが出来るなんて!
まさに何でもありだな!
それじゃあ、ダメ元でやってくれよ。
失敗したって現状とちっとも変わらないんだから、成功すればラッキーだろ?
まかせたから。』
「それじゃあ、先ずは癌細胞の瞬間移動先を決めないといけないんですよね。
それがないと、何処に飛んでっちゃうか分からないから、下手したら俺自身の体内に入っちゃうかもしれないから。
そうだなぁ‥‥‥目の前に出てきてもグロいだけだし、このフルーツが入っていたタッパーの中に入れてみます。」
『これは後で捨てとけよ。』
「ですよね。
それじゃあ遣ってみますよ? 」
『まかせた!』



