CHANCE 2 (後編) =Turbulence=







桧山マネージャーの結婚後、KYUは新星MUSIC日本支社のタレント専用のマンションで暮らしていたが、最近では殆んど俺のマンションに泊まりに来ている。



そして、示しあわせた様にソラが俺のマンションに遣って来る。



デートの待ち合わせ場所と化した俺のマンションでは、ほぼ毎日ソラとソナそしてKYUと俺の4人の生活が続いていた。



ソナとソラからすれば、T大学と目と鼻の先にあるこの場所は都合良く、その上忙しくてもここに居ればソラはKYUにソナは俺に会える。



記者達が居るときなんかは、テジュンが仕事終わりにソナを迎えに来てくれる。



そうすれば、ソラがソナと遊んだ後に兄である俺の所に遣ってきて、そこへソナの兄が迎えに来てくれたって感じで誤魔化している。



実際にそうだし、大学でもソナとソラは仲がいいし、俺とテジュンも元は同じバンドのメンバーだし。



そのテジュンも含めて今日もアボジ(親父)のお見舞いに来ている。



日に日に痩せていくアボジ(親父)を見るのは辛いが、それでもいよいよ明日は手術の日だ。



この手術が成功すれば、食事制限は有るものの、またアボジ(親父)と一緒に生活が出来る。



って言うか、今まであまりアボジ(親父)と一緒に暮らしていた記憶がなかった。



兎に角、いつも仕事を優先していた。



まぁ、俺の知らないところでオモニ(お袋)と良くデートに行っていたそうだが。



酷い時には、朝一番にプライベートジェットで日本に帰って来て、オモニ(お袋)とデートして夜の9時頃には再びプライベートジェットで韓国に帰って行くみたいなことを、週に2回もやったりしてたことが有るそうだ。



それもつい4~5年前の話だって聴いて、あきれ返ってしまった。



本社の方では、社長が突然行方不明になってるから、副社長や専務が必死で捜索したそうだ。



そんなお茶目過ぎるアボジ(親父)も、今は酒も煙草も止められて、おまけに明日は手術だからと昼御飯以降は何も食べていけないと言われ、ベッドの上で弱々しく笑っていた。



「アボジ、今日はKYUもテジュンも、来てくれましたよ。」



『社長、ご無沙汰しています。

お加減は如何ですか?』



「やぁ、テジュン君!

良く来てくれたね。

今日はとっても調子が良いんだよ。

まぁ、腹が減って力は出ないけどね!

キムチとかチゲが恋しいけど、刺激物はたぶんこれから一生食べられないだろうなぁ。

親父さんの会社には、もう慣れたかい?」



『まだまだ大変です。

売れる商品を考えるだけでも大変なのに、新たな物を作り出さないといけないから、毎日企画部内会議が深夜まで続いたりして、XYZの頃の方が楽でしたよ。』



テジュンの泣き言を皆で笑いながら、気がつけば面会時間が終わりにきていた。



オモニ(お袋)は、特別許可を貰っているのでそのまま残り、俺達は病室を後にした。