翌日、XYZとして最後の仕事も終わり、アボジ(親父)の見舞いに行った。



担当のドクターが、ナースステーションで看護師に色々と指示をだしていた。



俺は、アボジ(親父)の事が気になったので、そのドクターのビジョンを覗いてみる事にした。



過去のビジョンの中から、アボジの検査後のビジョンを見つけ出した。


ドクターは、アボジのカルテにMKと記入していった。



この略語の書き方は、以前遣ってた病院のドラマん中で、ドクター役の山崎幸次郎が書いていたので覚えていた。



MK、それは(マーゲン・クレブス)の略語だ。



あまりの事にショックで、言葉も出なかった。



マーゲン・クレブス



それは、胃癌のことを意味する。



アボジが胃癌?



そんなバカな!



おれは、おぼつかない足取りでアボジの病室へと向かった。



病室には、オモニ(お袋)の代わりにソラが来ていた。



「アッ、お兄ちゃん!

お疲れさま。

もう仕事終わったの?」




『今終わって、皆と別れてきたとこ。

オモニ(お袋)は?』



「家帰って、お風呂入ってから少し仮眠取ってからまた夜に来るって!

KYUオッパは?」



『桧山マネージャーと一緒に関東テレビに行ってる。

来週末、放送のバラエティ番組のゲスト出演。』



「な~んだ、つまんない!

こっちに一緒に来るかと思ってたのに‥‥‥」



『2時間ぐらいで終わって、俺のマンションに来ることになってるから、後でソナと一緒に俺のマンションに行っといて!

俺は、オモニ(お袋)が来るまでここにいるから。』



「分かった。

じゃあ、新星MUSICに行ってバイトしてくるね!」



『オゥ!

気を付けてな!』



元気良く手を振りながら妹のソラは出ていった。



ソラが出ていったら、寝たふりをしていたアボジ(親父)が、



「チャンス、おはよー!」



なんて白々しい挨拶をしてきた。



『何で寝たふりしていたんですか?』



「アレ?

バレてた?」



『バレバレですよ。

ソラが、KYUオッパは?って言った瞬間にピクッって動いて、分かりやすすぎですよ。』



「だって、起きてたらハヌルちゃん(妹のソラの本名)が、アッパ(パパ)大丈夫?ってずっと心配しているから、気を使わすじゃん!」



『じゃん!って‥‥‥‥‥

兎に角、今回はゆっくりと治療に専念して下さいね!

お医者さんからは何て言われたんですか?』



「働きすぎからくる貧血と、ストレス性の軽い胃潰瘍だって!

まぁ、直に良くなるって!

チャンスは、何も心配しないで、自分の仕事をしっかりやってなさい。

お見舞いも、ずっと居なくても大丈夫だから。

一応、完全看護の病院だぜ!

無理言ってヨンミちゃんに居て貰ってるけど、本当は付き添い必要無いんだから。」



『それで、いつまで隠しておくつもりですか?』



「何の事言ってんだいチャンス?」



『 マーゲン・クレブス。

アボジ(親父)、胃癌なんだろ?

隠さないでくれよ。』



「な~んだ!

俺のビジョン見たのか!

だったら分かるだろ。

もう、半年以上前から胃の調子が悪くて、ソウル医大病院で診断受けた時には、胃の半分近くは癌に侵されていたよ。

胃を全摘しても、助かる見込みは五分五分って言われたさ。

それなら、手術要らないって断ったよ。

今は、薬で進行を抑えて貰ってるけど、ただの気休め程度にしかならないよ。」



『どうして今までほうっといたんですか?

出来る事は何でも遣って、生きなきゃ!

オモニ(お袋)は知っているの?』