CHANCE 2 (後編) =Turbulence=






そこには、雑誌や新聞の文字を切り取って張り合わされた脅迫状が!


【麻生優理子様に近づく輩は誰であろうと万死に値する】


とか、


【市村巧己は神の逆鱗に触れたから天罰がくだるであろう】


とか、


【麻生優理子様に代わって神のシモベの俺様が市村巧己に天誅をくだす】


等、数枚の脅迫状のがそれこそ陳腐な内容で送りつけられてきていた。


ソッと封印の指輪を外してから、その脅迫状に触れてみた。


案の定、撮影所で見たビジョンの男の残留思念が、ドロドロとした感情と共に俺の脳内を刺激してくる。


「こんなものが届いている事は警察の方に話しているのですか?」


『それが、良くあることなんで放っておいたんで、まだ警察には‥‥‥‥‥』


「こんな事故が起きたのにですか?」


『済みません!

うちに被害が無かったもので、公にしたく無かったんです。

こういった物が、事務所に送りつけられてきていた事が世間の耳に入ると、色々な中傷をうけたりするし、特に今回は市村と麻生の両名に来ているので、スキャンダルに繋がるのは避けたいので‥‥‥‥‥‥』


「成る程!

分かりました。

それで、麻生優理子さんの方には何らかの被害とか出ているんですか?

ストーキングとか!

何か聞いていますか?」


『彼女自身に対しては、何も無いと思うのですが。

特に報告は受けていません。』


「分かりました。

今回の事件のターゲットはジェームス事務所の市村さんですが、実際の被害に遭ったのがうちの山崎なんで、新星MUSICとしても、色々とスタッフが動いて怪しい人物の特定に奔走しています。

もしかしたら、また市村さんを狙って来るかもしれませんので気を付けて下さい。

犯人が何時なんどき襲って来るかもしれませんので、出来るだけ独りで行動するのは避けた方が良いと思いますので。」


『そうですね。

気を付けておきます。

そちらを巻き込んで仕舞った形になってすみませんです。』


「いいえ、悪いのは犯人なんですから。

それでは、今日はこの辺で失礼します。

どうもお邪魔しました。」


ジェームス事務所を後にして、撮影所に出入りをしている大道具や美術スタッフに探りを入れることにした。


脅迫状が届いている上に、今回の犯行だ。


失敗したのだから、また狙って来るのは間違いない。


早く手を打たないと、本当に市村さんに被害が及ぶ。


今回のドラマ、尾張の虎の撮影場所で次に狙いやすいのは、やはりこの撮影所だろう。


巨大な敷地内には川も流れているし、幾つものステージがある。


巨体なプールも在ればホームセンターまであるのだ。


一部区域では、一般人の出入りも自由になっている。


そんな場所なら、また機材等に細工するのも可能だし、遠くから狙うことも出来てしまうだろう。


早くあの男を見つけないと‥‥‥‥‥‥‥!


『もしもし、アボジ(親父)、今大丈夫ですか?』


「あぁ、問題ないぞ。」


『実は、ジェームス事務所に脅迫状が何通も送られてきてました。

その脅迫状に触れて見ましたが、やはりあの写真の男の残留思念を感じとりました。』


「まだ、その男の行方は掴めないのか?」


『はい。

でも、今日か明日までには決着を着けたいと思っていますので見ていてください。』


「おいおい、余り無茶するなよ。」


『分かっています。

それでは、また何か分かりましたら連絡します。』


「気を付けて行動するんだぞ。」


『了解しました。

それでは失礼します。』


電話を切って、撮影所内をうろうろしていたら、今回のドラマで使われるセットを作っている棟に着いた。