アボジ(親父)は、プロファイリングで読み取った断片的なデータを、紙の上に次々と書き出していた。
アボジ(親父)は、こうやって書き出したデータを元に、今度は頭を使ってプロファイリングするのだ。
どちらかと言えば、こちらの方が凄いのだ。
警視庁特殊捜査課のデータ処理課のプロファイリングチームも顔負けの腕前なのである。
以前も、俺が小さい時に誘拐された時、たまたま新星MUSICの近辺を彷徨いていた男2人組を、たまたま通りかかった学生時代の桧山マネージャーが携帯電話を使って写メを撮ってアボジ(親父)に見せたんだ。
アボジ(親父)は、その写メを見ただけで、俺が捕らわれている場所までプロファイリングして救出してくれたのである。
そのことは、俺がハタチになった時にアボジ(親父)から教えて貰った。
そんなことを思い出している間にも、どんどんと紙の上には色んな事がかきだされていた。
紙の上には、
麻生優理子(あそうゆりこ)
中目黒駅
高校
ピアノ線
撮影所
大道具
この6つのキーワードを、じっと眺めていたがおもむろにこちらを向いて、
『チャンス、分かったぞ。』
「これだけで何が分かるんですか?」
『まずは、麻生優理子と高校で何か思い当たること無いかい?』
「‥‥‥アッ!
これってもしかして、先月まで遣っていたドラマ"高校時代"の事じゃないですか?」
『正解!
このドラマって言うのは、生徒役の麻生優理子が、教師役の市村巧己に恋をして、最後に二人が結ばれるって言う陳腐なドラマだったよな。』
「陳腐って言わないの!」
『と言う事は、やっぱり市村巧己が狙われていたって考えて良さそうだな!』
「そうですね!
アボジ(親父)のプロファイリングの高校や麻生優理子は、これで分かりました。
撮影所やピアノ線っていうのも分かります。
ビジョンで見えましたから。
犯行には、ピアノ線が使われてましたから。
中目黒駅っていうのは?」
『それは、この男がストーカーをしていて、麻生優理子が住む中目黒のマンションの直ぐ近くに引っ越して来て、この男は、この中目黒駅から電車に乗って通勤しているって感じ!』
「大道具って言うのは、もしかしてこの男の職業?」
『その通り。
見えたよ。
この男の腰にインパクトやドライバー、ハンマー等をぶら下げているビジョンが。』
「それでは、今からジェームス事務所の方に行ってきます。
もっと何か詳しく分かるかもしれませんので。」
『この写真は持って行くなよ。
どうしてこの写真が有るのか説明出来ないんだからな!』
「そうでしたね!
それでは、慎重に言葉を選びながら、それっぽい事を言って、何か情報を引き出してきます。」
『行ってらっしゃい。
とにかく、俺達の能力の事は絶対に知られないように!
良いね?』
くどいように念を押され、約束していた時間ちょうどにジェームス事務所に到着した。



