このまま霜山教授と話し込んでいたら、2時間は平気で喋っているので、タイミングを見計らって段ボール箱に入ったプリントを受け取り、藤本教授の研究室へ向けて歩き出した。


はっきり言って重すぎる。



12時35分


ようやく藤本教授が戻って来た。


「藤本教授、講義お疲れ様でした。」


『おう、高山君!

どうしたんだい?』


「じつは、秋菜さんの恋人の件で来ました。」


『もう分かったのかい!?』


「だいたいの事は分かりました。

彼の生い立ちとか、性格。

あと、現在の生活状態なんかが分かっています。」


『そ、それで?』


「まず、鶴見さんと秋菜さんの間にお子さんが出来たそうです。」


『え~エッ!

いきなり核心からかよ?!

本当なのかい?』


「はい。

直接、本人と会って話を聴きましたから。」


『…………。』


「そんな悲しそうな目をして黙り込まないで下さいよ!」


『…しかし………』


「生活状態ですが、そこそこ名の知れたバンドなんで、稼ぎ的には何も問題ないと思います。」


『そうか。』


「はい。

大学も出ていました。

それも、東京芸術大学卒業です。」


『あそこって、偏差値はかなり…』


「そうですね!

偏差値はかなり高い大学ですし、音楽専門の国立大ではトップクラスです。

両親が交通事故で亡くなってから、かなり荒れた生活を送っていたそうですが、今のバンドに入ってから変わったそうです。

以前、色々とトラブルも有ったそうですが、それに関しても若い青年を更生させるために遣った事だそうで、警察沙汰になってはいますが、それに関しても相手の両親とスムーズな和解をしていました。

所属事務所の社長の弟が、暴力団組長ってところは本当でしたが、弟の組にヤクザに憧れて遣ってきた少年達を、兄の元へと連れて行き、芸能界へと目を向けさせながら更生させているそうです。」


『それじゃあ所属事務所も問題ない。

金銭的にも問題ない。

学歴も問題ないと、そう言う訳だな?!』


「一つだけ問題有りなんですが…」


『一体、どんな問題が有るんだね!?』


「じつは、鶴見は秋菜さんと付き合いながら他の女性と同棲してるみたいなんです。」


『エッ!

それを早く言わんか!

二股をしてるんだな?!』