7月6日 午後11時30分
たっぷりと睡眠を取った俺は、地下室に向かう階段をゆっくりと降りて行った。
行き着いた先には、重くて分厚い木の一枚扉があった。
その重厚な扉を開けると、そこは20畳程の部屋になっており、隅には簡易ベッドやバスルーム、トイレにキッチンも有る。
予め運び込んでおいた荷物の紐を解き、着替えや歯ブラシ、ソナとの2ショット写真などを順番に出していった。
それから、ハラボジから渡された白い着物に着替え、祭壇のロウソクに火を灯した。
壁掛けの時計は23時50分を回っていた。
《まもなくだ…!》
俺は、一つ大きな深呼吸をしてから、祭壇の前に座り、全身の力を抜いて目を綴じ、深夜0時になるのを静かに待った。
カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…
ボ~ン ボ~ン ボ~ン
ボ~ン‥‥‥‥
7月7日になった。
その瞬間‥‥‥‥
「ウァ~~~!
ァ…頭が…割れる様に…ア゙~~ウァ~ッ!
誰だ~!
耳元で騒いでいるのは…!
うるさ~い!
止めろ~!」
その時、インターフォンのスピーカーからアボジ(親父)が、
『チャンス、力を抜いて!
ロウソクの炎を見つめて、精神統一しなさい。
今聞こえているのは、自分自身の過去に聴いた音とか声が入り込んでいるんだ。
自分自身に勝たなければ、先に進まないのだから。
ゆっくり呼吸しろ。』
と言う声が聞こえてきた。
目眩や吐き気を我慢して、言われた通りゆっくりと呼吸しながら、ロウソクの炎を見つめた。
それでも、雑音が耳元で騒ぎ、頭痛も治まらない。
このままじゃダメだ!
俺は、もう一度ゆっくりと深呼吸をして、祭壇の中央にある炎を見た。
しばらく深呼吸を繰り返していると、徐々に痛みや吐き気、目眩も治まってきた。
しかし、相変わらず耳元で雑音がうるさい。
全然おさまる気配すらない。
「アボジ、頭痛や吐き気はおさまりましたが、雑音がうるさくて堪りません。」
俺は、インターフォンに向かって叫んでいた。
耳元がうるさいので、まるでヘッドホンでヘビメタを大音量で聴いているみたいだ。
だから喋べる時に、ついつい大声になって仕舞う。
『チャンス、頭の中に自分専用のスイッチをイメージしてみろ。』