しばらくしてから、リハーサルの再開だ。


彼女は、先程とは打って変わってリラックスした素晴らしいマイクパフォーマンスを披露している。


今回の彼女は、司会進行というだけでなく、アカペラも披露するし、ダンスだって見せてくれる。


出場メンバーのプロフィールだってバッチリ記憶して、タイミング良く紹介していかなければならない。


1人のアナウンサーではなく、観客を魅了するパフォーマーとしての出演者なのである。


だからこそ、難しいのだ!


新星MUSICは、普通の誰でも出来るようなものは、求められていないのだ。


以前、木村アナ(イクチャン)がKYUのデビューライブでアシスタントをした時だって、終わってから足が震えて涙が止まらなかったって言っていた事が、今ならわかる気がする。


リハーサルが終わると、チャンスが遣ってきた。


「桧山マネージャー、さっきの杏奈さんのマイクパフォーマンス良かったですよね!」


『そうだな!』


「ヤッパリ愛の力ですよね!」


『な、何の事言ってるんだ?』


「とぼけないで下さいよ!

杏奈さんにコクったんでしょう!?」


『バ…バカな事を言うんじゃないよ!』


「XYZのメンバー、全員見てましたよ!」


『エッ~!!!

何で?』


「だって、桧山マネージャーが杏奈さんを連れて出て行ったんだから、こりゃあ見ない訳にはいかないですよ!」


『いつから見て………』


「最初から最後まで全部見させて頂きましたよ!」


『あ…悪趣味な!』


「ハハハハハ…!」


『まぁ、そういう事だ!』


と、苦笑いをしながら小さく言って頭をポリポリかいている。


「おめでとうございます。

やっと想いが通じ合いましたね。

結婚式には、俺達がバッチリ演奏して盛り上げますからね。」


『気が早いよ!

まだ始まったばかりだし、これから先どうなるか分からないんだから。』


なんて嘘ぶいているから、俺は封印の指輪を外して、桧山マネージャーの未来を覗いてみた。


すると、来年の春に結婚式を挙げて、直ぐに双子の女の子を出産していた。