携帯自体は私の家庭が母子家庭だから母さんが何かあったときのためにと買ってくれた。



父さんは母さんのお腹の中に赤ちゃんの私ができたことを知った途端、連絡がつかなくなったと母さんは言っている。


それ以来母さんは父さんのことをひどく憎んだ。


当時、母さんは泣いて泣いて泣きまくったと私は幼き頃に聞いたことがある。
 


母さんの名簿を選択し、メール文を書く。


「うん。わかった。母さんのも作って電子レンジに入れておくね。」


左上のヤホーボタンを押すと、紙飛行機の絵とともに『送信中・・・』と画面に出てきた。



送信完了を確認することもなく携帯をパタンと閉じてまた元にあった場所、机の端っこに置いた。


脱いでいた制服を再び着て千恵に買い物に行って来るという置手紙をリビングに残し、母さんのメールの通り、机の上の文鎮の下にあったお金を持って静かに家を出た。


スーパーまで歩きながら美樹さんと椿くんのことだけ考えていた。

あの2人はとてもお似合いだと思った。


すごく輝いていた。

私もあんなだったら、と少し思ってしまった。




そう・・・あの2人はまるで、ダイヤのような輝きを持った人だった・・・。