「ばいばーい!」

「おめ、おっせー!」

「ごめんよ、はよ帰ろーぜ!」


まわりの皆が下校していくように、私も一人下校する。


皆は今日もなんら変わったことのなかった1日を学校で過ごしたかのように笑って下校していく。


私はガーゼが貼ってある右の頬に手をあてた。



あのあと、教室に戻るなり愛莉たちが私が掃除をさぼったと山崎に言ったらしい。


彼は私の明らかに変わった様子に触れることなく怒ってきた。

臭いと皆に言われ、保健室に行き、それからはずっと寝かせてもらっていた。


あのとき、保健室の先生、長谷川(はせがわ)は私の様子に気付いて、何かあったの?と驚いた様子で聞いてきた。


その目は他の人のように私を軽蔑した目ではなく、心から心配してくれている、優しい目だった。


だから私は長谷川に全てを告白した。


今までのいじめのこと、先生のこと、愛莉たちのこと、そして、ついさっきの出来事・・・。


長谷川はしばらく黙って聞いていた。

話しているうちに全てが頭でフラッシュバックして、涙がまたぼろぼろと溢れ出てきた。


「・・・雑巾で・・・・・・顔を・・・・・・」

嗚咽を漏らしながら話す私を長谷川は抱きしめてくれた。


その優しさに包まれるように私はわんわん泣いた・・・。