それでも私は我慢できずにいつのまにか椿のシャツの背広を掴んでいた。


しばらく歩いているとそこらへんにある木ばかりの光景とは違うようなところが見えてきた。

遥夏が椿に視線を向ける。


椿はそれに対し無言でうなずく。


次に遥夏は私に視線を移す。


私も同じく深くうなずいた。


左右から生えている長い草を掻き分けながらそこへ行ってみる。


そこへ出てみるとそこは川原だった。

近くで小川がちゃぽちゃぽと小さく音をたてて流れている。


ここは木で円形に囲まれているが木が一本も生えていないため陽がよく射しこむ。


きっとここから何百、何千メートルと上空から見たなら森の中で不自然に円形の穴が開いてるように見えるのだろう。


私は森の暗さから抜けられ、安心してあたりを見回しているとあるものがちらと視界に入った。


私は手で口元を覆った。


私はおそるおそる震えた手でそれを指さす。


それに気付いた遥夏が指を指しているほうを向く。


遥夏もまたそれを見てたじろいだ。