「久木くん!!みてみて!!」

「今、忙しい」

 私がやっとできるようになった、物を浮かす魔法。

嬉しくて斜め前の席で本を読んでいた久木くんに話しかけるが、無視。

目線はずっと本で、私の顔すら見てくれない。

顔くらいあげてくれれば良いのに…。

「久木くんのヘタレ」

「なっ?!」

 ボソッとつぶやくと、驚いたように顔をあげる久木くん。

その表情に満足したので、私は次なるターゲットを探しに行く。



 五十君の去っていく後ろ姿を見つめながら、先程ボソッとつぶやかれた言葉を思い出す。

“久木くんのヘタレ”

「…俺ってヘタレなのか」

 周りの奴らも俺のことを“ヘタレ”と思っているのだろうか?

ていうか、“ヘタレ”って何だ…?