黒猫*溺愛シンドローム




「……え?」



その言葉の意味を理解する暇もなく…


ぐいっと、腕を引かれて、部屋の中に連れ戻された。


……かと思えば、

次の瞬間には、ふわりと、いつかみたいに体が宙に浮いていて。


気づいたときには、

なぜか、私はベッドの上に…って、ちょっと!




「なにしてんのっ?」



背中の感触。
この位置からの眺め。

私を見下ろす瞳。
覆い被さる体温。

幾度となく陥ってきたこの状況。


これからどうなるか、なんて聞かなくたってわかる。


……危険、だ。



「ちょっ…離してよっ」



早く逃げなきゃ。

押し退けようともがいてみるも……



「……よかったぁ。」



ぎゅっと。暴れる私を抱きしめて、王子様は安堵のため息を漏らした。


……なに?



「そろそろ、俺も限界だったんだ。」


「はっ?」


「このまま行ったら、犯罪者になるとこだった。」


「何言って…」


「もう、待たなくていいんだよね?」



……っ。近っ。

至近距離で、覗きこんでくるキラキラの瞳。



「風歩ちゃんは、

俺のこと好きになってくれたんだもんね?」