……本当に誰もいない。
そりゃ、玄関を開けると同時に、あの“黒いの”が嬉しそうにお出迎えしてくれたけどさ。
リビングに入って、愕然。
そして、急速に押し寄せる不安。
だって…ねぇ?
「…何がいいかな?風歩ちゃんは何が食べたい?」
キッチンに立って、冷蔵庫を探る“王子様”。
でも、危険な“男”であることには変わりない。
「あー…材料買ってくればよかったなぁ。これで作れるのは……」
何やらぶつぶつ言ってらっしゃるけど。
呑気にご飯なんてご馳走になってる場合じゃない…って、そうだ!!
「私が作るっ」
「え?」
勢い良く立ち上がった私に気づいて、振り返る王子。
「私が、やる。」
「え?でも…風歩ちゃん、料理できない…「大丈夫!」
この前、お兄ちゃんが作ってるのを“見てた”し。
私だって、やればできるのよ。
くるみにできて私にできないわけがないし?
何もできない“ペット”じゃないってことを証明してやるわ!

