黒猫*溺愛シンドローム





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「……アレ?」





そんなこんなで、歩くこと約20分弱。

何度もお邪魔している、“風見邸”へと着いたわけだけど……



「真っ暗、だ。」



いつもなら、玄関どころか庭まで灯りがついていて。

門を開けるや否や、“あの”お母さんが出迎えてくれるはず…なのに。

今日は……



「ああ!そっか…」



しばしの沈黙の後。

王子は思い出したように呟いた。



「今日は、うちも誰もいないんだった。」


「はぁっ?」


「両親は毎年恒例の温泉旅行だし、妹は伯母さんの家に泊まりで…」


……何、それ。



「あ、でも大丈夫。俺が何か作るから。」



鍵を取り出して。

特に慌てるでもなく、私を中へと促す王子。



「ちょっ…」


「遠慮しなくていいよ。
1人分も2人分も…作る手間は同じだから。」


「そうじゃなくて…」



私が心配してるのは、夕飯のことじゃなくて……