黒猫*溺愛シンドローム




「…えっ?!」



言うや否や、私の腕を掴んでくるっと進路変更。

風見家の方向へと歩き始めた。


……何?



「ねぇ、ちょっと?」



引きずられる手前。

小走りになりつつも、隣を見上げれば…



「ひとりはさ、やっぱり寂しいでしょ?」



柔らかい微笑みが降ってきた。



「もういい時間だし。うちでご飯食べて行きなよ。」


「え?」


「どこかで一緒に食べて帰ってもいいんだけど…やっぱり、大勢のほうが美味しいと思うし。」



ね?と言うように、私を見てるけど……

何なの?急に…



「お兄さんがさ、」



戸惑う私を無視して、ヤツは続ける。



「お兄さんがいなくなったばっかりで…いつもより寂しいんじゃないかなって。」


「……はっ?」


「あんなに賑やかな人だもん。たとえ数日でも、いなくなったのは大きいと思うんだ。だから…」



いつの間にか繋がれていた手をきゅっと握り直して。



「できるだけ、俺が傍にいてあげるからね?」



にっこりと。

この上なくやさしい笑顔を向けた。