黒猫*溺愛シンドローム





「風歩ちゃんの家、今日も誰もいないんだよね?」



校門を出て。

駅への道のりを歩き始めて数分。

王子様が聞いてきた。



「……そうだけど?」



って言うか、さっきの説明はなし?

知り合いってことはなんとなくわかったし?

別に深く知りたいわけじゃないけどさ。

一言くらいあってもよくない?

……まったく。



「お兄さんも急だったもんねぇ。帰って来たと思ったら、またすぐ出て行っちゃうなんて……」



ぼんやりと呟いた。


……そうなんだよね。



あの日。

コイツを家に呼んで、
私を無視して2人で盛り上がっていたのも束の間。


その数日後には、
お兄ちゃんは、あっさりとまた旅に出てしまった。



「今度は国内だ!」とか言っちゃってさ。


興味のある“外国”は一通り制覇したものの、国内をほとんど知らないことに気づいたらしく。


まずは南だ!って、沖縄に向かったんだよね。



「夏くらいには戻る」とか無責任なことを言い残して。



「じゃあさ、うちに寄って行きなよ。」