黒猫*溺愛シンドローム





「…ねぇ、浅海さん?」


心底悔しそうに唸るお兄さんを横目に見ながら、隣に座る彼女に小声で呼びかけてみるも…


「気にしなくていいから。」


俺の言いたいことを察したのか、あっさりと返されてしまった。

そんなこと言われても…



「あ、甘いモン平気?」



戸惑っていると、いきなり言葉が降ってきて。


「えっ?」


慌てて顔を上げれば、お兄さんの視線は俺の手元に。



「和菓子、食える?」


「あ…」


「久しぶりだからさ。風歩の好物をと思って買ってきたんだけど…
苦手なら、無理して食わなくていいからな?」


「いえ。大丈夫です。いただきます。」



笑顔で返せば、


「そうか?ならいいけど…」


お兄さんも安心したように微笑んだ。






……なんか、

噂と全然違う、かも。




それにしても…



「浅海さんって、和菓子が好きだったんだ?」