黒猫*溺愛シンドローム





今、俺たちは、
揃って彼女のマンションに向かっている。



朝、あの後…

兄妹2人のやりとりは、登校時間ギリギリまで続いて。

結局、一言も話せず仕舞だった俺。


玄関を出る間際、お兄さんが彼女に言ったんだ。


「放課後、もう一度つれて来い。」って。


俺に聞きたいことがあるとかないとか……


ちゃんと挨拶もしたかったし、何より大好きな彼女のお兄さん。

つまりは、将来的には俺にとっても“お兄さん”になるわけだから…


ゆっくり話ができるなんて絶好のチャンス。


だから、俺としてはすごく楽しみなんだけど……



「………。」



隣を歩く彼女は、さっきからため息ばかり。

ずっと浮かない表情。

……うーん。


ま、いっか。

そうそう。とりあえず…



「…ねぇ、浅海さん?」



最寄り駅からマンションまで。

半分くらい行ったところで俺は足を止めた。


「……何よ?」


ピン、と。つないだ手のせいで引っ張られる彼女。


「ちょっと、いい?」