「……捕まえた。」
事態を把握したときにはもう遅い。
「ちょっ…離してっ」
「やだ。」
暴れてみたって、何の意味もない。
「はーっ…。気持ちいい。すっごい落ち着く……」
耳元で響く声。
首筋にかかる吐息。
何より、私の身体をすっぽり包み込む温もり。
「疲れたときは、浅海さんが一番だよね。」
意味不明な言葉を呟いて、さらに強まる腕の力。
……完全に、囚われた。
「なにすんのよっ。セクハラっ。痴漢っ。変態っ」
せめて口だけでも…と思って攻撃したものの、
「今日は全然触れなかったから諦めてたんだ。でも、よかった。間に合って。」
……ダメだ。全然聞いちゃいない。
「やっぱり、1日1回は、ふれあう時間が必要だよね。」
完全にコイツのペースだ。
「カリンともさ、
夜、ブラッシングしながらコミュニケーションをとるようにしてるんだけど…」
聞いてないからっ。
私を抱きしめたまま、勝手に話を進める“変態“。
「浅海さんの場合は…
やっぱりこれだけじゃ足りないや…」

