黒猫*溺愛シンドローム






「……はあぁっ?」



それは、予想外だった。

何てことをっ。



「理解のある、いいご両親だね。“娘を頼む”って、鍵までくれたよ。」



王子様がにこにこしながら取り出して見せたのは、

明らかに、昨日までうちの母親が所持していた家の鍵(鈴付き)!

……あんの親はっ。



「それで、入れ違いに家に上がらせてもらったんだけど…浅海さん、まだ寝てるみたいだったから。」



淡々と続ける王子様は、あくまでマイペース。


って、そりゃそうだよ。
私の起床時間は、早くて8時だもん。

6時台なんて夢の真っ只中だよ。



「一応、起こしてはみたんだけど…起きる気配はないし。もう少し寝かせてあげようかな、って。」


「起こした…って、私の部屋に入ったのっ?」


「うん?」


サーッと血の気が引いていくのがわかった。

最悪っ。

何もされてないよね?

慌てて自分の身体を確かめる私に、



「……『眠り姫』の話って、やっぱり嘘だったんだね」


ぽつりと呟いた王子。


……は?




「だって



浅海さん、何回キスしても起きなかったもん。」