「いらっしゃい。早かったね?」
俺は、にっこり笑って彼女のもとへ歩み寄った。
「あんたっ…何してんの?私のカバンは?」
荒い息を整えながらも、俺を睨み上げる瞳は少しだけ潤んでいる。
髪は乱れてるし、頬は蒸気してるし……
「…一生懸命走ってきたんだね。えらい。えらい。」
まるで小さい子供にするみたいに、俺は彼女の頭を撫でた。
サラサラの手触り。
甘い香り。
もう…めちゃくちゃにしたくなる。
だって、“俺のために”走ってきたんだよ?
「なっ…触んないでっ。」
急いで振り払おうとしてるけど、全然抵抗になってないし。
「今日の補修は?いつもより早く終わったんだ?」
「……今日は、先生いなかったから…って、ちょっ……」
「そっか。ごめんね、つき合ってあげられなくて。
今日は、大事な用事があって……」
「いいっ…それはいいから、離してっ。そして、私のカバンを返してっ」
「んー?」
俺の腕の中で、彼女は暴れてるけど。
捕まえたんだから、離すつもりはさらさらない。
「……あー。気持ちいい」

