なんで、こんな状況になってるんだっけ?


それすら、もうわからない。


気づけば、私の背中には冷たい壁があって。


後ろに逃げ場はない。


しっかりと身体に巻き付いている長い腕。


もちろん、横にも逃げ道はない。


目の前には、綺麗な王子様のお顔。


あと数秒で、確実に触れるだろう。



“逃げられない”のは明らかだけど、


“逃げたい”と思わないのも本当で……



「これからは、寂しい思いはさせないようにするから。ずっと、傍にいる。」



まるでプロポーズ?なセリフと共に、触れる唇。



「だから……
浅海さんも、俺から離れて行かないでね?」



……やっぱり、私おかしいよ。


どうした?何があった?


なんで?





再び近づいてくる唇に


私は初めて、
自分から目を閉じた。


それを受け入れるため、に。