黒猫*溺愛シンドローム




「浅海さんさぁ…」


「な…何よっ」



何かに気づいたように、私のことをじーっと見つめる風見歩。

今の言葉……深読みされたりしてないよね?

あれは、口から勝手に……



「寒くないの?」


「……はっ?」


「いや…何か、見るからに寒そうな格好だなぁと思って。」



そう言って、ふいに手を伸ばしてきた。



「ちょっ…」



よける間もなく、私の首筋に触れる指先。

ぞくっと、変な感覚が走って身体が震える。



「やっぱり……」



慌てて振り払ったものの、代わりに、その腕を掴んで引き寄せられてしまった。



「ちょっ…何っ?」


「これ、貸したげる。」



顔を上げた瞬間、ふわりと感じた温もりと香り。



「外は寒いよ?コート着ないなら、せめてこれくらいしておかないと。」



固まる私に、ぐるぐると巻き付けられるもの。


それは……



「女の子は、身体を冷やしちゃいけないんだよ?」



王子様の…マフラー。