「…うおっ…人増えてきたな……」


段々灰の背中が遠くなる。


やっべ…。このままじゃ見失っちまう…。


「おい!!」

―グイッ

「うおっ!?」


人混みの隙間から、誰かに手首を掴まれた。


危うく人形落ちるとこだったぞ!?


「びっくりするだろ!!いきなりいなくなるな!!」


あ…灰だ。わざわざ戻って来てくれたのか?


「…あー…すまん」

「えっ………?」


素直に謝ると、灰は気色悪そうな顔であたしを凝視していた。


「…何だよ」


そんな凝視されたら…謝った自分が馬鹿みたいじゃんかよ…。


あああ!!!恥ずかしいだろ!

赤くなる自分の顔を見せまいとそっぽを向いた。


手は灰に掴まれたまま…。