理由もわからないまま、あたしは直江くんの彼女を演じていた。
あたしたちが付き合いだしたっていう噂は
あっという間に広まり・・・
文系女子からは冷たい視線で見られることも多かった。
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「琴女、弁当」
「はいはい・・」
あたしは、直江くんの前にお弁当を出す。
あたしと直江くん、上杉くん、真田くんは、
毎日食堂で一緒にお昼を食べている。
上杉くんと真田くんは学食で、あたしと直江くんはお弁当。
しかも、直江くんのお弁当はあたしの手作りで・・。
「でも、琴女ちゃん、オサムのために毎日お弁当作ってきて、
甲斐甲斐しいね♪俺もそんな女の子欲しい♪」
「ハハハハ・・・」
作らされてるだけなんだけど・・・
彼女のフリなのにココまでさせられてるのは正直微妙。
「琴女、茶」
「はいはい・・・」
「なんなの?!その熟年夫婦みたいなやりとり!!」
真田くんはギャハハハと笑った。
「そうだよ♪あ~ん♪とかすればいいじゃん?」
上杉くんはにっこり笑って言った。
・・・だってあたしたち別に付き合ってないんだし・・・
あたしは黙って俯いた。
すると、目の前にピックに刺さったウィンナーが見えた。
顔を上げると、直江くんがあたしに向けて
そのウィンナーを突き出している。
「・・え?」
直江くんはあたしの目を見て一言。
「・・食え・・」
・・・もしかして、あ~んのつもり?
「・・・早くしろ・・・」
直江くんの顔が見る見る赤くなっていく。
あたしは、そのままウィンナーを口に入れた。
「~♪」
「見てるこっちが恥ずかしいな・・・」
上杉くんと真田くんはニヤっとしながらあたしたちを見た。
・・・直江くん・・・
今のは、ちょっと嬉しい・・カモ。

