「瑠璃」 「なに―――」 トン、と。 気づけば迅の腕の中。 「っ!!」 ドキンっと跳ねる心臓。 迅もなんだろうかと考えた。 「ゆっくりでいい」 「?」 「ゆっくりでいいから」 その後に続く言葉はない。 声の音がない。 あるのは心臓の音。 ドキドキと早まる、どこか心地良いと思える鼓動を聞きながら、あたしはゆっくりと迅の背中に手を回す。 ドキドキと、音。 2つの、音。 ただその静かな空間で、あたし達は抱き合っていた。